2007年の連載を振り返る
2007年12月26日
(これまでの yomoyomoの「情報共有の未来」はこちら)
今回は2007年最後のエントリになります。4ヶ月あまりの連載期間ではありますが、良い区切りですので今年書いたエントリのフォローアップをさせてもらいます。
当方の連載で何度も取り上げることとなった『CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ』ですが、そのデジタル版公開の試みは残念な結果になりました。
個人的には残念というより胸糞悪い結果というほうが適当ですが、それとは関係なくこの本は重要な内容を持っており、後でもでてくる MIAU につながったという意味でも特筆すべき本に違いありません。
この回で取り上げたヴァージン・モバイルの広告の件は、その後訴訟に発展してしまいましたが、先月原告は Creative Commons に対する訴えを取り下げました。少なくともこれは妥当な判断だと思います。
WIRED VISION でもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの写真がフィーチャーされていますが、編集部ブログに書かれているように、試行錯誤を経てノウハウを蓄積していくしかないでしょう。
Creative Commons は今月の15日に設立5周年を迎えましたが、CC ライセンスはそのままで商用利用時の条件を簡単に追加できるようにする CC+ が始まっており(もう一つの CC0 についてはまだちょっと意図を掴みかねています)、クリエイティブ・コモンズのコンテンツが今後一層営利経済に広がることを願って止みません。
第3回:ウィキ&ペディア
今年も Wikipedia は話題に事欠きませんでしたが、Google が今月になって開始した Knol というテストサービスも、WikiScanner が浮き彫りにした匿名性と信頼性の問題を差別化要因ととらえています。
ただ個人的には Wikipedia がそう簡単に他のサービスにとって代わられることはないと考えます。Wikipedia は、少なくとも英語版はそれだけのインフラになっていますし、今後は Wiki よりも pedia の側面を重視した発展を目指していくだろうと当方は予想します。
第4、5回:Web 2.0は我々の文化を殺すのか?(その1)、(その2)
最近ではパリで開催された Le Web 3 に登場しているアンドリュー・キーンですが、果たして『The Cult of the Amateur』の邦訳は無事某社から出るのでしょうか。
そういえば「邦訳が出たら WIRED VISION で取り上げる」リストに入っている本が何冊かあるのですが、ジェシカ・リビングストンの Founders at Work は、本ブログ開始時からそのリストの筆頭にあるのですが、一体いつになったら刊行されるのでしょう……
今年出す本がすべてベストセラーとなった勝間和代氏の著書に、翻訳でも本を出すことで人生のステージが上がるという話があるそうです。
ついカッとなってワタシはそれを頭から否定してしまいましたが、翻訳のおかげで見えた新しい世界、得られた知己はかけがえのないものです。自分がこうして文章を書いているのは、翻訳を通じて優れた人たちの仕事に触れたことに依るのを忘れてはいけません。
でも、翻訳は飽くまで翻訳であり、何より翻訳でなければなりません。
第7回:Life Goes On
この文章が公開された日に TBS RADIO 文化系トークラジオ Life のプロデューサー長谷川裕氏からメッセージをいただき、この文章を書いた甲斐があったと嬉しく思いました。
最後に触れている書籍版 Life には、実はワタシが番組に出したメールも収録されていますので、ヒマな人は探してみてください。
この文章で触れた Google の対抗策が OpenSocial だったわけですが、mixi などを含む多くの SNS が賛同を表明したもののその真価が明らかとなるのは来年以降でしょう。
一方で Facebook は画期的な広告システムがプライバシー問題で大きな批判を浴び、CEO のマーク・ザッカーバーグは謝罪に追い込まれました。
ただ Facebook の行き過ぎは、「オン」で「オフィス」な SNS を突き詰めた結果とも言えるわけで、その前提を必ずしも共有しない日本では OpenSocial にしろ文化の翻訳が必要なのは確かでしょう。
この文章の最後で触れた How to Get a Job Like Mine は、青木靖氏が「私のような仕事につく方法」という日本語訳を公開しています。とても面白い文章です。
第10回:MIAU設立に寄せて
この回は、ちょうど白田秀彰先生の連載の谷間にあったため意地で書いたものですが、Perfume の歌詞を絶妙に織り込めると気付いた瞬間「これはいける!」とノリノリになったという側面もあるというのはここだけのヒミツです。その後無事白田先生の連載も再開し、一回目で MIAU について書かれています。
先日、私的録音録画小委員会が、ダウンロード違法化は不可避との方向性でまとめられてしまいました。それを受けて早速 MIAU を失敗と明言する人もいます。それ自体は良いとして、それに考えなしに付和雷同する人たちを見るにつけ、この文章で書いた通りの展開じゃないかと苦々しくなります。
ワタシ自身はまだこれは始まりとしか思っていませんし、第一「ダウンロード違法化」にしてもまだ決定ではありません。MIAU が活動を継続して制度にインパクトを及ぼしていこうとすれば(実際そうするはずですし、それにワタシは協力していくつもりです)、これからも MIAU は数々の「敗北」を味わうでしょう。MIAU の発起人の方々もそれは先刻承知なはずです。
本文が公開される日に開かれる緊急シンポジウム「ダウンロード違法化の是非を問う」でもその覚悟と今後への方策が聞けるでしょう。
第11回:Internet Turns On Junior Unsatisfied Nerds
ネット上で活躍する人の訃報を聞くのも珍しくなくなりましたが、itojun さんほど心のこもった追悼文が多く書かれた人をワタシは知りません。
11月1日にリリースされた OpenBSD 4.2、12月19日にリリースされた NetBSD 4.0 はいずれも itojun さんに捧げられており、IPv6 の研究開発や普及活動に貢献した人を支援する Itojun Fund が ISOC(インターネット協会)により創設されるそうです。
第12回:偽ジョブズとアップルの2007年
Apple の企業秘密を漏洩したとして訴えられていた噂サイト Think Secret が和解とともに閉鎖した件がありましたが、Fake Steve Jobs にも資金提供と引き換えにブログ閉鎖の打診があったそうです。
それを早速大っぴらにした Fake Steve Jobs に対し Apple から怒りの警告(この展開を予想しなかったのか?)があったりと新たな火種になりそうで、もう潮時と思われた Fake Steve Jobs のキャラが、最後の大立ち回りをやるチャンスかもしれません。
第13回:WWWからGGGへ?
このエントリは思いの他ブックマーク数が伸び、それを編集長が驚いていましたが、実は著者の当方も同様だったりします(笑)。
それだけ Web 3.0 への興味があるのか、あるいはセマンティック・ウェブへの期待が実は高いのか。ただワタシ自身は以前からティム・バーナーズ=リーが思い描くセマンティック・ウェブが実現することに懐疑的で、ウェブのトッププレイヤーである Google(の Peter Norvig)が投げかける疑問に近いものを感じます。
そうした意味で、GGG という落としどころを見出せたことはバーナーズ=リーにとって光明かもしれません。少し前に ReadWrite/Web のエントリの翻訳「勃興期にあるセマンティックウェブ、注目の10アプリケーションの現在」が公開されていますので、トレンドを掴みたい方にご一読をお勧めします(そういえば ReadWrite/Web のリチャード・マクマナスは、2008年予測記事でセマンティック・アプリケーションを一押ししてますね)。
第14回:真実と伝説
このエントリを書くために調べものをしていて偶然「チャック・ノリス伝説」の書籍版を知り、文章に盛り込んだのですが、チャック・ノリス自身に訴えられてしまったようです。
このインターネット・ミームに対し、ノリス本人はずっと好意的で、テレビ番組で嬉しそうにネタをいくつか読み上げてたぐらいですし、最近ノリスが出演したマイク・ハッカビー前アーカンソー州知事の米大統領選応援コマーシャル(YouTube)もモロに Chuck Norris Facts を意識した作りになっていて笑ってしまったので、今回の訴訟には合点がいきませんが、出版社の根回しが足らなかったのでしょうか。
第15回:クックとハック
Shiro Kawai さんから、ポール・グレアムのレシピを教えてもらって思い出したのですが、この文章に盛り込もうと思ったネタに、ビル・ゲイツからストールマンからもっと若い人たちに至るまで、この業界の著名人の得意料理レシピ集なんて面白くね? というのがありました。
少し早いですが、皆さん良いお年を。読者の皆さんにとって2008年が良い年になることをお祈りします。そして皆さんも、クリスマス・イブの夜に一人この文章を書くという悲しい生活を送る当方の人生がもう少し明るいものになることを少しは祈ってくれませんか?
yomoyomoの「情報共有の未来」
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- Wikiについて語るときに我々の語ること2011年1月13日
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