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yomoyomoの「情報共有の未来」

内外の最新動向をチェックしながら、情報共有によるコンテンツの未来を探る。

MIAU設立に寄せて

2007年10月24日

(これまでの yomoyomoの「情報共有の未来」はこちら

今週はお休みをいただく予定でしたが、先週急遽設立された MIAU(Movements for Internet Active Users、インターネット先進ユーザーの会)について少し書かせてください。

MIAU の発起人の一人であり、この WIRED VISION にも連載をもたれている白田秀彰氏の文章があればよいのですが、運悪く「網言録」と次の連載の合間にあたっています。当方はこの MIAU の母体の一つになった、白田氏が代表を務めるロージナ茶会の末席を汚しているのですが、多忙のため MIAU についての呼びかけメールを読み落とし何の貢献もできず、また当分動けそうにないので、ここで雑文を書くぐらいしかできないというのもあります。

先週 MIAU の設立が発表され、直後に設立発表会が開かれましたが、ネットでの反応(公式サイトやはてなブックマークから辿るのがよいでしょう)が当方が予想したよりも冷ややかに見えたのも今回の文章の契機と言えます。

もちろん好意的な反応も多いですし、これは飽くまで当方の印象の話です。それに否定的な反応であれ、それが今後の改善につながる生産的な批判であればよいのですが、名前が気に食わないとか瑣末なもの、あるいは「斜めな目線ありき」な反応には正直失望を覚えます(ハイレベルな自爆ギャグの域までくると素直に笑えるのですが)。

もっとシンプルに考えてみてはどうでしょう。

  1. 違法サイトからのコンテンツダウンロード違法化への反対意見表明
  2. コピーワンス及びダビング10技術の採用に対する反対意見表明
  3. 著作権の保護期間延長に対する反対意見表明

以上の文章が何を意味しているか分からない人、また半数以上意見を異にする人は、残念ながら MIAU が代表するユーザの範疇を外れるでしょう。それにあたらない本文をお読みのあなたは、間違いなく MIAU のターゲットとなるアクティブなインターネットユーザです。

当方は上記三点を重要な問題だと考えますし、一人のインターネット利用者として MIAU の方針に賛同します。

先日、ローレンス・レッシグ教授からクリエイティブ・コモンズへの寄付を求める電子メールが届きました。レッシグについては稿を改めて書く予定なので深くは触れませんが、今年の12月で5周年を迎えるクリエイティブ・コモンズの活動から彼が得たものは、決してポジティブなものばかりではなかったはずです。

設立発表会において白田秀彰氏も引き合いに出していたレッシグの言葉を今一度引用します。

もし君たちが、自分自身の自由のために戦うこともできないというのなら ……君たちはその自由に値しない。

ネットユーザが「敵に回すと怖いけれども味方としてはいささか頼りない」存在だというのは今も昔も変わらないのかもしれません。またこういう活動は、どれだけ有能であったり人望がある人が関わっても必ずしもうまくいくとは限りません。

だから「別に文句はないけど、どうせ大したことはできないでしょ」と斜に構えておき、もしうまくいかなければ「ほら言った通りでしょ」と上から目線がネットユーザ的には無難なのかもしれません。MIAU の発起人の方々もそんなことは百も承知であり、レッシグの苦闘も知っています。それでも覚悟を決め、「便利で楽しくてクールなものを、自由に享受して、何が悪いのだ?」と立ち上がった彼らに対し、各人の人間的な好き嫌いはまったく別にして、ワタシは深い敬意を払いたい。

当方が MIAU に望むのは、発起人の何人かも挙げている電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)です。しかし、いきなり EFF のレベルの活動を要求するのは無茶で、まずは着実に組織としての地盤を固めるのが先決でしょう。白田先生の言う「名前と顔を持った代弁者」の役割を当方が果たせないのは残念ですが、それでも傍観するばかりでなく、できることで支援する意思があることを書いておきます。

我々はネットの自由を日々享受しています。例えば、田舎に隠棲する当方が MIAU の設立発表会の動画を見ながら本文を書くことひとつとってもインターネットなくしては成り立ちません。しかし、その自由は日々脅かされてもいます。一方的な譲歩でないバランスの取れたネット社会の枠組みを作るために残された時間は長くはないと当方は考えます。

後になって、あの日あの場所で凍りついた自由に手を伸ばしてももう届かない——そうなってからでは遅いのです。

僕は MIAU を支持します。あなたはどうですか?

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プロフィール

1973年生まれ。 ウェブサイトにおいて雑文書き、翻訳者として活動中。その鋭い視点での良質な論評に定評がある。訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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