2009年に求められるマイクロペイメントのイノベーション
2009年2月 4日
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昨年秋から景気の悪い話ばかりで、現実に景気が悪化しているのだから仕方ないとも言えますが、Web 2.0 の熱狂はどこへやら、広告モデルに依存したウェブサービスって生き残れないんじゃない? 無料経済なんて持続性がないっしょ、という声が強まっています(他人事ながら、クリス・アンダーソンの新刊は大丈夫なんかいなと思います)。
昨年末 ITmedia に掲載された「「タダが当たり前」の時代は終わる? カフェスタが「お金払って」と呼び掛けた理由」あたりを基点として、コンテンツをちゃんと収益にしていくにはどうしたらいいのかという話題が改めて盛り上がりました。
こうした話で真っ先にあがるのが少額決済、マイクロペイメントです。
しかし、それはこの10年ずっとそうなのです。言い換えれば、ある意味マイクロペイメントはずっと成功し損ねてきたのです(これには異論があるでしょうが)。
そもそもワタシが「マイクロペイメント」という言葉を知ったのは、ユーザインタフェース界の第一人者であるヤコブ・ニールセンが1998年の1月に Alertbox に書いた「マイクロペイメントの論拠」で、10年以上前になります。
その後もニールセンは何度かマイクロペイメントへの強い期待を表明していますが、2000年には「この5年間を振り返って」という文章で敗北を認めており、同年末にクレイ・シャーキーによる強力な反論があったからというわけではないでしょうが、今世紀に入ってから Alertbox でマイクロペイメントという言葉が登場する回数は激減します。
この分野でほぼ唯一の成功者といえるのは PayPal でしょうが、シャーキーが喝破したように、PayPal は「既存のクレジットカード・インフラに対する新しいインターフェイスに過ぎない」とも言えるわけです(だからこそ成功した、のかもしれませんが)。
ここで2009年現在の話に戻れば、主要な Web 2.0 ウェブサービス、特に Twitter と Facebook が(広告モデル以外で)確固たるビジネスモデルを築けるかどうかで、大げさに書けばウェブというメディアの寿命が変わるのではないかと考えています。
今年に入って TechCrunch に「今年はiPhone、MySpace、Facebookがいよいよマイクロペイメント・サービスの提供へ」という記事が載りましたが、やはりここでもマイクロペイメントがクローズアップされており、もしかしたら今回がマイクロペイメントを定着させる最後のチャンスなのかもしれません。
ただ各社がそれぞれまったく別個にマイクロペイメントのプラットフォームを作ってもダメそうで、マイケル・アーリントンが書くように、実績あるサービスを提供しているサードパーティーと提携するのが妥当でしょう。
そこで日本に目を向けると、ようやく昨年秋に PayPal のマイクロペイメントが日本円に対応したくらいで、「グリー効果と日本におけるマイクロペイメント・プラットフォーム」に書かれるようにモバイルプラットフォームの課金モデルのほうが堅そうですし、これにはもっと目が向けられるべきでしょう。
個人的には、ユーザ生成コンテンツについてユーザ同士のマイクロペイメントが活発となり、それが巡ってサービス運営元が潤うなり、有料コンテンツ市場の拡大につながるモデルが実現すれば素晴らしいと思いますし、そうした意味で "social payments" を謳う tipjoy など Twitter などと連携サービスに期待したくなりますが、ちょっと夢想的過ぎるでしょうか。
ワタシは一年近く前にも書いたようにはてなポイントがそうしたネットサービス連携の基軸通貨になることを期待していたのですが、不適切な作品の通報者への報酬のような志の低い使い方をしているところに期待するだけ無駄なようです。
最後に取り上げておきたいのは、ただのにっきで知った「OpenSocial対応 "公認"PayPalガジェット」で、この言葉を見ただけで、ソーシャルグラフのマネタイズ、OpenID + OAuth というおいしい物同志のおいしい組み合わせ、そしてもちろんマイクロペイメントなど、気になっていたいくつかの話題が自分の中でぐぐっと結びつく興奮を覚えました。
まだまだワタシはウェブにワクワクしたいし、まだまだ遊ばせてほしいのです。
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