ネットは政治の監視者たりえるか
2008年4月23日
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前回インターネット規制法案について書きましたが、こういうときに痛感するのが、自分を含むネットユーザの政治に対する関心の弱さです。政治に何の興味もないというわけではないが、政治のために行動を起こすとなると途端に億劫になるという。
一方でアメリカでは、バラック・オバマとヒラリー・ロダム・クリントンによる民主党候補選びが長期化していることもあって、途切れなく大統領選挙の話題が続いています。あちらのブログを読んでいるだけでも伝わる、草の根レベルにまで達する大統領選挙を巡る盛り上がりをみるにつけ[1]、日本人の政治意識の足りなさを嘆きたくなります……なんて出羽守的論調は、いかにもバカっぽいですね。(笑)
アメリカ人にとって大統領選挙自体が一種の「お祭り」であるという前提は置くとして、そのプロセスを通じて候補者が「鍛えられる」利点があるとはいえ、情報通信技術が発達した21世紀もこれほど長期にわたる選挙期間が必要なのか疑問ですし、各候補が集めた政治資金の多寡が話題になりますが、対立候補へのネガティブキャンペーンの CM などを見ても、そんなに大量の資金が必要な選挙運動ってどうなんだとかいろいろ思うところはあります。
それにそんなにアメリカの政治システムが立派で適切に機能しているなら、例えばローレンス・レッシグが「腐敗」を新たな研究テーマにするはずもないでしょう。「CODE 2.0とレッシグ2.0」を書いてからも、彼を下院選挙にかつぎだそうという Draft Lessig [2]の動きがあり、結局出馬は思いとどまったものの、Change Congress にその活動は引き継がれるようです。
インターネットを最大限活用して政治をより良くしようという試みとして、先週若き天才アーロン・シュワルツが立ち上げた watchdog.net も注目です。以下、彼のブログエントリの内容を要約しながら解説します。
アーロン・シュワルツは "political insanity season in the US" という表現を使っていますが、今回の新プロジェクトの契機となったのはやはり大統領選挙を巡る狂騒だったようで、プログラマーが政治に関わる有効なやり方について、おそらくは彼と同じ若き俊英たちと議論を重ね、いろんなアイデアを出し、そして何か掴めたという確信が watchdog.net になったそうです。
このサイトは、以下の三段階の実現を目指しています。
- 投票行動、献金記録、選挙活動の会計報告などあらゆるデータソースから情報を集め、すっきりと統一されたインタフェースで情報を見れるようにする
- 議員に連絡したり、地方紙に投書したりするなど、人々が行動を起こすためのツールを構築する
- 市民、活動家、組織、政治家、プログラマなど政治に関心を持つ人たち皆にとってのハブになる
この一番目、いわば政治マッシュアップを達成するだけでも大したものだと思いますが、アーロン・シュワルツは情報を与えるだけでは不十分であり、人々に行動を起こさせるところまでセットで watchdog.net が真に有用な共同作業のデータベースになると考えています。ウェブに特化したシンプルかつ見やすいインタフェース、またすべてをフリーソフトウェア、フリーデータとして提供することを言明するのも彼らしいですね。
今回の文章のタイトルはありがちなものですで、「監視者」という言葉を使ったのは件のサイト名からの連想ですが、「監視」よりも「参加」に重きが置かれているのが分かります。というより、当事者意識のない「監視」など床屋談義に過ぎません。
日本にもYahoo!みんなの政治のようなよくできたデータベースがありますが、そこからうまく「参加」を促す watchdog.net と同様の試みが求められているように思います。
* * * * *
[1] ワタシが読んでいるところで支持候補者を明言している著名ブロガーとなると、ジョエル・スポルスキー、ローレンス・レッシグ、デイヴ・ワイナー、ダナ・ボイド、あと xkcd とすべてバラック・オバマ支持です(TechCrunch はオバマとマケイン)。お前の巡回範囲が狭いだけと言われればそれまでですが、この偏りは興味深いものがあります。
[2] この Draft Lessig の運動を始めたのは、前回紹介した『Access Denied: The Practice and Policy of Global Internet Filtering』の著者の一人である John Palfrey です。
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