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yomoyomoの「情報共有の未来」

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We Can Make It! ──「Make 日本版」の楽しみ

2008年3月26日

創刊以来ずっと翻訳に携わってきた Make 日本版Volume 04 がちょうど発売になるので、今回は Make を取り上げます。

Make 日本版は創刊以来ずっと翻訳に携わっている仕事ですが、当方の貢献は号を重ねる毎に減る一方です(笑)。これは最初担当だった連載者が一人抜け二人抜けしたためですが、もっとも今号は当方に時間的余裕がなく、少ない割り当てでもいっぱいいっぱいだったという事情があります。

book080326.gif

この雑誌を一言で説明するなら、モノ作りの楽しさを追求するハードウェアハック雑誌、となるでしょうか。ワタシ自身は半ひきこもりでお世辞にも DIY 精神に溢れるタイプではないのですが、Make 日本版の仕事には思い入れがあります。

その理由は……突き詰めれば、ワタシにとってはオライリー(O'Reilly Media)に関する仕事、それ自体が報酬だから、となります。甘いと言われるでしょうが。

大雑把な印象論になりますが、かつて Whole Earth Catalog、そして初期の WIRED が体現していた空気は、現在では形を変えて、例えば Boing Boing のようなブログ、そしてオライリーに受け継がれているように思います。梅田望夫さんの表現を借りるなら、「リスクテイクや起業家精神のクレージーさを尊重して楽しむ感覚、西海岸のフロンティア精神を引き継いだ遺伝子、口先だけではなく本当にさまざまな人種の人達と分け隔てなく付き合う気分」となるでしょうか。

現在のオライリーは技術系出版社からカンファレンスビジネスに軸足を移していますが、ティム・オライリーのことを山師呼ばわりする人が(ほとんど)いないのは、オライリーが現在もシリコンバレーのエッジの部分の庇護者的役割を果たしているからです(そのあたりについては、例えば林信行さんの Foo Camp レポートを読むと雰囲気が伝わるでしょう)。

Make は Boing Boing のマーク・フラウエンフェルダーが編集長を務め、WIRED の創始者であるケヴィン・ケリー(今号ではオンデマンド出版について書いてます)、現編集長のクリス・アンダーソンが寄稿しています。当方が翻訳を担当しているコリィ・ドクトロウ、ブルース・スターリングという SF 作家組も WIRED〜Boing Boing〜オライリー人脈ですね。

もちろん Make は、小難しいことを考えることなく楽しむことができる、これぞハックというべきユーモアと機転と情熱に満ちた、また一部はかなりクレイジー(笑)な表現となって暴れる愉快な雑誌です。本家もなかなかに無茶していると思いますが、正直三号で終わると思っていた(失礼!)日本版を軌道に載せたオライリー・ジャパンの田村さんには尊敬の念を抱かずにはいられません。

今回の日本版最新号が面白いのは、単に Make 本家の記事を翻訳するだけでなく、同じもの(裏庭ドライブインシアター! ジャンク風力発電機! シガーボックスギター!)を日本で作り楽しむとしたらどうなるか、のフォローアップが充実しているところです。実際やってみるとなかなか難しいという話が多いので、正直それにより記事としての爽快感は減じているのですが、これは誠実な姿勢だと思います。

最新号には「安全な作業習慣がギリギリのプロジェクトを試みる自由をもたらす」と題された記事がありますが、この記事の表現を借りるなら、「乳母国家」(「福祉国家」の軽蔑的な言い方)と「夜警国家」の中間にある、モノ作りの自由を享受し、創造性を発揮できる「Maker国家」を作り上げようとする意志は、その誠実さと対になるべきです。

もっとも Make の祭典 Maker Faire の動画を見ると、日本人のワタシからすれば、メリケンは豪快というか乱暴だねぇと呆れるところも多々あるわけですが、Volume 04 の(最近では「先生何やってんすか」という声もある)野尻抱介さんによる Maker Faire レポートから、この上なく Make という雑誌の本質を表現する文章を引用して本文を終わります。

 新奇であろうとするから、ブラックボックスを排しているから、結果がフィジカルだから、他者に刺激を与えられるし、実世界を変えられる。装置を混乱させる外乱こそが、それに磨きをかけるのだ。
 私はこのムーブメントを心強く思うし、その輪に加わる気でいる。全部自分で作らなくていい。みんなでやろう。明るい未来を信じて、にぎやかに行進しようではないか。
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プロフィール

1973年生まれ。 ウェブサイトにおいて雑文書き、翻訳者として活動中。その鋭い視点での良質な論評に定評がある。訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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