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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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『ファイナル・デッドサーキット 3D』:アトラクション感覚の痛快ホラー

2009年9月 3日

ファイナル・デッドサーキット 3D
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大学生のニック(ボビー・カンポ、画像上)は、ガールフレンドのローリ(シャンテル・ヴァンサンテン、画像下)と2人の友人とともにサーキットのカーレースを観戦中、恐ろしい大事故に遭遇――1台のレースカーがクラッシュし、後続車が巻き込まれ、車体の破片やタイヤが客席に飛び込んで観客たちを次々に殺戮し、老朽化した施設が崩壊してニックたちも犠牲に――と思いきや、実は白昼夢を見ていたのだった。しかし夢で見た予兆が繰り返されるのに気づき危険を察知したニックは、仲間と近くにいた数人の観客を引き連れて会場の外に出る。その瞬間、サーキットで実際に惨劇が起こり、ニックたちは命拾いしたことを知る。だが、彼らは死の運命から逃れたわけではなかった。1人また1人と、生存者たちが街中で予期せぬ事故に遭い、凄惨な姿で命を落としていく……。

過去3作が公開された『ファイナル・デスティネーション』シリーズは、冒頭で仲間たちと連れだって出かけた主人公が大惨事の予知夢を見て、いったんは命拾いするものの、生存者たちを次々に襲う死の運命から逃れようと苦闘するというフォーマットを確立。幾多のホラー映画の中でもスピード感あふれる演出と不謹慎なユーモアで独自の作風を発展させ、惨死シーンの容赦ない描写にもかかわらず幅広いファン層を獲得してきた。

暗がりから得体の知れない怪物や殺人鬼に襲われるホラーのタイプが“お化け屋敷系”だとすると、ハイスピードで恐怖シーンが次々に繰り出される本シリーズはいわば“絶叫マシン系”(これを顕著に示すのが3作目の『ファイナル・デッドコースター』で、冒頭の大惨事が遊園地のジェットコースターで起きた)。こうしたアトラクション感覚の面白さが、最新作『ファイナル・デッドサーキット 3D』で3D製作されたことによって文字通り「新たな次元」を獲得している。

オープニングのサーキットでレースカーがカメラに向かって突進してくるシーンや、先端の尖った工具や木片、タイヤや車体破片が眼前に飛び出してくるショットは、3D映像で見ると本能的に顔や体をそらしたくなるほどのリアルさだ。こうした3Dの飛び出し効果は、『センター・オブ・ジ・アース』や『ブラッディバレンタイン3D』でも見られたが、両作品とも比較的暗い背景で使われることが多かったのに対し、本作では白昼のサーキットや都市部で奥行きもよく見通せる空間の中で提示されるため、その威力が増しているように感じられた。

シリーズの特徴の1つとして、事故につながる複数の要因を伏線として列挙しておき、それらがドミノ倒しのように小さなハプニングを連鎖的に起こし、最後の致死的な大事故に至る様子を丁寧に描くシークエンスがある。毎回あの手この手で観客を楽しませてくれるが、本作ではその裏をかき、それぞれの伏線がことごとく寸止めで不発に終わり、緊張と緩和が繰り返されたあとでようやく衝撃シーン、という仕掛けも用意されている。ここでは惨事を予期させておいて外すテクニックで巧みに笑いを誘う。

事故が起きる現場も、ヘアサロン、洗車場、プール、自動車修理工場、映画館(3D映画の観客たちが災難に遭うのも笑える)、エスカレーターなど都市の日常的な空間であるため、そこが一瞬にして凄惨な非日常に変わるコントラストが面白いし、不謹慎だが交通事故や火事の現場を眺める野次馬のような気分も味わえる。冒頭のサーキットの観客席で女の子が「クラッシュを期待してレースを観に来てるの?」と連れの男に問いかけるが、これは映画の観客への問いかけでもあり、その答えはもちろん「イエス」。3Dの実写映像でリアルに描写される事故を体感して絶叫し、野次馬気分で笑いながら眺める、それが本作の正しい楽しみ方であり、痛々しくも快感を味わえる、まさしく「痛快」なホラー映画なのだ。

『ファイナル・デッドサーキット 3D』は8月28日に全米3121館で封切られ、オープニング3日間で約2800万ドルというシリーズ最高値を記録。デジタル3D実写映画としては、2008年に米国で公開された『センター・オブ・ジ・アース』(約2100万ドル)、今年公開された『ブラッディバレンタイン3D』(約2100万ドル)の興収を大幅に超える初日3日間最高成績を達成したという。日本では10月17日に封切りとなるが、同日公開される『戦慄迷宮3D』との“実写3Dホラー日米対決”も含め、3D映画の話題がますます盛り上がることになりそうだ。

[『ファイナル・デッドサーキット 3D』公開情報]
2009年/アメリカ/原題:The Final Destination/上映時間約90分
出演:ボビー・カンポ、シャンテル・ヴァンサンテン、ヘイリー・ウェブ、ニック・ザーノほか
監督:デヴィッド・R・エリス(『デッド・コースター』)
脚本:エリック・ブレス(『デッド・コースター』『バタフライ・エフェクト』)
配給:ギャガ・コミュニケーションズ Powerwed by ヒューマックスシネマ
10月17日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
公式サイト:fd-3d.gaga.ne.jp


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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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