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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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3D映画『センター・オブ・ジ・アース』を内覧試写で鑑賞(1)

2008年8月14日

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(C) MMVIII NEW LINE PRODUCTIONS,INC.AND WALDEN MEDIA,LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

10月25日から全国公開される3D実写長編映画『センター・オブ・ジ・アース』(公式サイト)。日本配給のギャガ・コミュニケーションズが公開に先立ち実施した内覧試写にて、8月12日に鑑賞してきました(3Dメガネを着用、字幕・吹き替えは無し)。今回は、3D映像の視聴体験と、ストーリーにおける科学的、技術的な要素を中心にレポートします(公式サイトの予告編でわかる程度のネタバレを含むのでご注意ください)。

ジュール・ヴェルヌの原作と、映画のストーリー

原作は、SFの開祖と呼ばれるフランスの作家、ジュール・ヴェルヌが1864年に発表した小説『地底旅行』(原題『Voyage au centre de la terre』、英訳題『Journey to the Center of the Earth』)。

原作の主な登場人物は、19世紀のハンブルクに暮らす一人称の語り手であり冒険旅行にしぶしぶ同行する青年アクセルと、その伯父であり勇敢かつ頑固な学者のリーデンブロック教授、そして寡黙ながら頼りになる山男のアイスランド人案内役ハンス。いっぽうの映画『センター・オブ・ジ・アース』(以後『センター~』と略記)では、いかにもハリウッド製のファミリー向け娯楽大作らしい翻案がなされ、現代のボストンに暮らす地質構造学の科学者トレバー・アンダーソン(ブレンダン・フレイザー)、その甥っ子のショーン(ジョシュ・ハッチャーソン)、アイスランド人女性の山岳ガイドのハンナ(アニタ・ブリエム)の3人が「旅の仲間」となる。


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(C) MMVIII NEW LINE PRODUCTIONS,INC.AND WALDEN MEDIA,LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

原作では、古本から見つかった暗号文の「地球の中心へとつながる入口がある」というメッセージを頼りに、一行はアイスランドのスネフェルス山を目指す。これに対し『センター~』では、小説『地底旅行』に描かれた地底の世界が実在すると考えたトレバーの行方不明の兄(=ショーンの父)を探しに、3人はスネフェルス山から地下へと入っていく。つまり、(観客と同様に)映画の登場人物たちにとっても『地底旅行』の内容は「既知の情報」であり、小説に描かれた旅を主人公たちが追体験するという、ひねりの効いた設定になっている。

原著の挿絵画家リウーによる、巨大キノコの森、地中にある広大な海、嵐の海と首長竜といった印象的なモノクロの挿絵も、色鮮やかな立体映像で見事に再現されている。さらに、縦穴に物を落としたときの音で穴の深さを計測したり、イカダを組んで航海したり、岩壁の向こうにある水脈を求めて壁に穴を開けたりといった原作の探検の名場面も、それぞれひと工夫加えられて映画に登場する。


理屈抜きで楽しめる“びっくり箱ムービー”

ページ上の画像に端的に示されているように、被写体がスクリーンから飛び出してくるような映像が、やはり3D映画の一番の楽しさだろう。本作でも、冒頭の三葉虫の触角に始まり、先を伸ばした計測メジャー、前方(カメラ側)に投げ出したヨーヨー、突き出した腕など、長さのあるものやカメラ側に飛んでくる物体を巧妙なカットで不意に提示し、びっくり箱よろしく観客を驚かせる。この手の仕掛けで最も秀逸だと思ったカットは、具体的に明かすことは控えるが、イカダでの航海の場面で登場する。ぜひ劇場で観て、盛大にびっくりしていただきたい。

びっくり箱がアミューズメントとして機能するように、予想外のものが眼前に飛び出してくることによる驚きは、本能的な快感、自然にわきあがる喜びにつながっているように思う。エリック・ブレヴィグ監督は、ディズニーランドの3Dアトラクション『キャプテンEO』などにも参加していた立体映像のパイオニアであり、観客を驚かせ喜ばせる3D効果にはそうした経験も活かされているのだろう。

(2)に続く


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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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