最後に、オススメの映画を何本か
2011年5月31日
2008年6月に始まったこの連載も今回が最後。長いような短いような約3年間、お付き合いくださりありがとうございました。
当初はオーディオビジュアル系のコンテンツやサービス、メディアなどの話題を広く扱っていたが、掲載記事のページビューの状況と個人的な関心の変化が重なり、次第に映画の話題が増えていった。現在公開中または近いうちに公開される映画で、紹介したいものはまだまだたくさんあるが、メジャーな作品は別媒体で改めて書くとして、ここでは比較的マイナーだけどオススメの佳作を中心に取り上げてみたい。
■『アリス・クリードの失踪』(6月11日公開)
身代金目当ての誘拐を実行する男2人と、誘拐された女の3人しか登場しない、物語の大半も人質を監禁するアパートの中だけで進行するという超低予算のサスペンス映画ながら、緻密な脚本、迫真の演技、巧みなカメラワーク、効果的な演出で飽きさせない。本作が長編監督デビューとなる英国人のジェイ・ブレイクソンは、クリストファー・ノーラン、ダニー・ボイルに続く存在として期待を集めている。 公式サイト
■『ミツバチの羽音と地球の回転』
核・原発・被ばくの問題を追い続けている鎌仲ひとみ監督のドキュメンタリー。前に紹介した『100,000年後の安全』を観たときも思ったが、今までいかに私たちはエネルギーや放射性廃棄物の問題をよく知らないまま原発を受け入れてしまっていたか。今年2月に劇場公開され、自主上映会も各地で行われている。 公式サイト
■『アトムの足音が聞こえる』(公開中)
今回挙げる5本のうち唯一未見ながら、周りからすごく良かったと評判を聞いているので。『パビリオン山椒魚』『パンドラの匣』の冨永昌敬監督が手がけた映像音響のドキュメンタリー。冨永監督は商業映画でも個性を発揮しつつ、インディペンデント寄りの良作も作り続けている。 公式サイト
■『うまれる』
誕生と家族をテーマにしたドキュメンタリー映画。本作でデビューを飾った豪田トモ監督は、筆者と同じ東京都多摩市出身で、筆者が自ら運営する地域情報サイトでインタビューもさせていただいた。とはいえ、地元びいきでもなんでもなく、本当に素晴らしくて感動できる作品。一般の夫婦たちの自然な表情や本音の言葉をうまくとらえていて、構成もよく練られている。男性にもおすすめ。これも自主上映会が各地で行われている。映画が監督の"子ども"だとすれば、本作はまさに「親を選んで生まれてきた」作品だ――先週の上映会での監督アフタートークを聞いて、そんなことを思った。 公式サイト
■『127時間』(6月18日公開)
最後は、マイナーどころか超メジャー、『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督の最新作。例外的に取り上げるのは、今の日本で観られるべき映画だと思うため。困難な状況でも絶対にあきらめない、過去の失敗も必ず取り返せるチャンスが来ることを信じ、ベストを尽くすこと。真の勇気とは何かを教えてくれる。 公式サイト
それでは、またどこかでお会いしましょう。
高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」
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