電力消費なし、レアアースなしの、超高密度ハードディスクが実現できる?(1)
2010年12月24日
(これまでの 山路達也の「エコ技術者に訊く」はこちら)
電圧をかけるだけで、磁石の向きが変わった!
──「冷たいパソコン」を作れるかもしれないとおっしゃってますね。これはいったいどういうことでしょう?
私たちの身の回りでは、たくさんの記憶媒体が使われています。特に、テレビ番組の長時間録画などにはハードディスクが欠かせません。ハードディスクでは、ナノスケール(1nm(ナノメートル)は100万分の1mm)の小さな磁石が並んでいて、この磁石の向きによって情報を記録しています。この磁石の向きを変えるために、磁場が使われます。磁場をかけることで磁石の向きを変えられることは、昔から知られていました。どうやって磁場を作るかご存じですか?
──電磁石ですね。巻いたコイルに電流を流すことで磁場が発生するという。
はい、まさにそれです。直接磁場を作ることをできればいいのですが、それは無理で、どうしても電流を流さなければなりませんでした。「電力=電流×電圧」ですから電力を消費しますし、磁石も熱を持ちます。1つ1つの磁石は小さくても、ハードディスクには数十億個の磁石が使われているので、電力消費量も熱も無視できないものになります。
パソコンのハードディスクくらいなら大したことはありませんが、データセンターとなるとその電力消費量や熱は膨大で、冷却のエネルギーも桁違いです。しかも、人間の扱う情報量は今後も増大し続けるのは確実でしょう。
では、電圧だけを掛けて電流を流さずに磁石の向きを変えることができれば、画期的な記録媒体ができるのではないだろうか?
──電圧を掛けるだけで、磁石の向きを変えられると考えたのはなぜでしょう?
そう考えたのは私たちが最初ではありません。2003年頃、欧米の科学界を中心に、電圧を掛けるだけで磁石の向きが変わる物質が発見され、NatureやScienceといった名だたる科学雑誌にも多数の論文が投稿されました。しかし、結局未だにこれらの物質は実用化されていません。この物質はレアアースを使った複雑な酸化物で、作るのが非常に難しかったのです。現在も研究が続けられ、学術的に面白い発見が続いていますが、実用化へのハードルは高いのが現状です。
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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」
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