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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

赤道直下に花開く、環境空中都市「GREEN FLOAT」(1)

2010年11月26日

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蓮の葉のような巨大な浮遊構造体が、赤道直下の洋上にいくつも広がる壮大な光景。それが清水建設の提案する環境都市「GREEN FLOAT」だ。高さ1000mのタワーには数万人が居住し、再生可能エネルギーがその暮らしを支える。二酸化炭素排出量は何と「マイナス」。驚くべき都市構想について、同プロジェクトリーダーの竹内真幸氏にうかがった。

赤道直下は理想的な建設候補地

赤道直下に浮かぶ環境都市「GREEN FLOAT」の模型。太陽光を有効に利用できるようタワー部分は逆円錐形をしている。植物工場がタワー部分に設置されるほか、水辺には自然農園や森が広がる。

──赤道直下の浮遊型海上都市「GREEN FLOAT」というのは、何ともインパクトのあるビジョンですね。

赤道直下というのは、太陽エネルギーを存分に利用できるだけでなく、生態系も豊かに育ち、台風の影響が最も少ない地域でもあります。GREEN FLOATは固定式ではなく、潮流に浮遊する方式です。移動方向を修正する時にだけ動力を利用します。こうすることで、海中への日射遮蔽等への影響も軽減され、海洋の生態系にもダメージを与えずにすむだろうと考えています。

GREEN FLOATの基本ユニットは、直径3000mの大きな花びらのようになっており、高さ1000mの空中部分には3〜4万人、水辺には1万人が居住することを想定しています。タワー部分には植物工場を配置して、住民に食料を供給。宇宙太陽光発電、海洋温度差発電や波力発電、風力発電によって都市に必要なエネルギーを生み出します。また、赤道直下の地上1000mの高さでは空調なしでも気温が26℃に保たれますから、エネルギーをほとんど使わずに、避暑地の快適さを実現できるでしょう。GREEN FLOATでは、環境技術を駆使することで二酸化炭素排出を「マイナス」にできると考えています。

GREEN FLOATの基本構造。海上に浮かぶ浮遊式の構造を取っている。

──GREEN FLOAT構想はどのように生まれたのでしょう?

一般的に、建設業はお客さまの要望に合わせて建物やインフラを作っていくものですが、当社ではその時代のテーマを未来プロジェクトとして発信する取り組みを以前から行っていました。バブル期には宇宙ホテルなど景気のいい構想もありましたが、バブル崩壊後は残念ながら中断せざるをえませんでした。

しかし、今のように混迷の時代だからこそビジョンを見せるべきだと社長の宮本洋一が主張し、2008年初春から今の時代を表すコンセプトの検討を開始しました。

今の時代に未来プロジェクトを提案するのであれば、高いだけ大きいだけのものではダメでしょう。テーマはどう考えても「環境」ということになります。自然に負荷を与えず、コンパクトで効率のよい都市。けれど、原始時代に戻るのではなく、新しい生活の豊かさを維持できるものでないと受け入れられません。

こうした環境都市を実現するためには、どのような技術が必要か。基礎研究レベルでは可能ではあるものの、まだ商品化や採算性の検討が行われていない技術を集めて、将来的な可能性を提示することにしました。

検討を重ね、GREEN FLOAT構想として2008年秋に発表しましたが、当時はちょうどリーマン・ショックで世界中が動揺している時でした。「日本が沈むかもしれない時に、建設会社が何をのんきなことを言っているんだ」と(笑)。最近ようやく、「こういうビジョンこそ、今の日本に必要だ」と言っていただけるようになりました。

今年5月には、スーパー連携大学院、野村證券、清水建設で提携しました。技術的課題に関する研究を推進する手段の1つとして、スーパー連携大学院の研究会テーマに取り上げていただくことになりました。今後は実用化に向けて、大学などの研究者と共同研究を推進していく予定です。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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