電池不要の「紙」端末が作るセンサーネットワーク(5)
2010年10月29日
──そのうち、名刺に電子回路が印刷されるようになったりするんでしょうか?
紙の印刷技術は確立していますから、低コストで大量に作るのに向いています。大面積のセンサーも簡単に安く作れるでしょう。
同じ東京大学の染谷研究室では、有機半導体を使ってトランジスタを作り、センサーやディスプレイを作っています。アンテナよりもさらに高度な話ですが、これが実用化できるとアンテナとセンサー、処理回路までを紙の上に実装できるかもしれません。
──紙アンテナやセンサーで、どんな応用が可能になると思いますか?
例えば、食材の品質管理に使えるかもしれませんね。高級ワインや生鮮食品を輸送する時に、温度管理が徹底されていたかどうかの証明に使うこともできるでしょう。
電波を電源に使うメリットの1つは、環境中になければ飛ばして給電することもできるということです。物流のチェックポイントなどで電波を照射して給電。輸送中にセンサーはデータを記録し続け、次のチェックポイントでまた給電。いわばマイクロレベルのワイヤレス給電です。
すべてのコンセプトを実現するには10年くらい掛かると思いますが、ソフトウェアによる電力制御は、今すぐにでも各種電子機器に応用できるでしょう。
──アーティストと組むと面白い作品ができそうな気がします。
お菓子のパッケージに印刷されていて、子どもが遊べても楽しそうですね。
半分冗談、半分真面目な話ですが、RFIDタグ用の情報を送信するために最適なアンテナの形状を調べていたら、某有名スポーツ用品メーカーのロゴそっくりになったそうです。靴底に取り付けて、靴を踏む時の圧力で発電すれば、電池レスの歩数センサーも作れるでしょう。
将来的には、電池レスで電子インクを書き換える電子看板も実現できるかもしれません。
研究者プロフィール
川原 圭博(かわはら よしひろ)
東京大学大学院情報理工学系研究科講師。2005年東京大学 大学院情報理工学系研究科博士課程修了、博士(情報理工学)取得。助手、助教を経て2010年より現職。研究上のモットーは、社会に対して大きなインパクトを与えうる技術を、情報通信技術に立脚した手法に基づいて取り組むこと。現在はエネルギーハーベスティングと無線給電に注力。
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