電池不要の「紙」端末が作るセンサーネットワーク(3)
2010年10月29日
ソフトウェアで、電力使用を賢く制御
──電波をどうやって電力に変えるのでしょう?
アンテナに電波が当たると、微弱な信号が観測されます。この段階では、交流電流で、しかも数μVからかなり高くても1V程度の電圧しかないため、電子回路を動かすことはできません。そこで、整流回路で直流に変換し、さらに昇圧器で電圧を上げます。発生した電気はコンデンサに蓄えて利用します。
電力ロスを抑えるために回路設計を工夫することはもちろん重要なのですが、それだけでは実際の仕事をさせることはできません。
──どうしてでしょう?
従来の電子部品は、安定的な電力が電池から供給されることを前提にしているからです。電波のように不安定な電源は想定していません。
そのため、電子部品がデータ送信などの仕事を行おうとした途端に電力不足になってしまう。しばらく待っているとコンデンサに電気がたまっていきますが、中途半端なたまり具合で使おうとしてまた失敗する......。これではどんなに待っていても仕事をさせることができません。
そこで、どれくらい待てば、仕事に必要な電力がたまるのかを予測できる、ソフトウェア的な仕組みが必要になってくるのです。
──しかし、そういう予測や判断を行うためにもエネルギーが必要になってきますよね。
はい。例えば温度を測って近くにある無線スポットに報告を送るセンサーがあったとしましょう。どれだけのエネルギーが残っているのか判断するために、仕事に必要な分の3%が消費されますから、33回チェックするだけで、仕事1回分のエネルギーが使われてしまいます。適切なタイミングで起きて、仕事ができるようにしないといけません。
──電波から得られるエネルギーは、かなりばらつきが大きいのではないでしょうか。
最初にエネルギー残量をチェックしてまだ不十分なら、次に起きる時刻を、例えば5分後というようにメモリに記録して、再びスリープに入ります。5分後に起きてまだエネルギーがたまってないなら、今度は10分後に起きる、それでもダメなら次は30分後。30分後に十分にエネルギーがたまっていて仕事ができたら、今度はもう少し短く20分にしてみる。
要するに、できるだけ短い間隔で起きて、できるだけ仕事の回数が多くなるタイミングを探すのです。
現在のところ、データ送信には無線とマイコンで最低でも40〜50mA(ミリアンペア)が必要ですが、スリープ中はマイコンの消費電力を1μA程度に抑えられ、この程度なら常に充電状態にしておけます。
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