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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

電池不要の「紙」端末が作るセンサーネットワーク(1)

2010年10月29日

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多数のセンサー付き端末を身の回りに配置して、コンピュータが人の生活を支援する「センサーネットワーク」。20世紀末から提唱されるようになったセンサーネットワークは、未だ構想の域を出ていない。だが、電池レスで動作する「紙」アンテナ/センサーが登場したことで、センサーネットワークも実用化の可能性が見えてきた。東京大学大学院 情報理工学系研究科の川原圭博博士に、研究の現状をお聞きした。

センサーネットワークの難点は、電池交換にあった

ジョージア工科大学が開発した「紙」アンテナとセンサー。

──電波を受けて動作し、電池を必要としないセンサーシステムを開発しているとお聞きしました。なぜこうした研究を始められたのですか?

10年くらい前になりますが、私が学生の頃、ネットワーク分野ではセンサーネットワークの研究が流行していました。センサーネットワークというのは、超小型のセンサーを身の回りにばらまいて、温度や明るさ、人の動きを測定・送信し、実世界で人間が何をしているのかをコンピュータに認識させようという取り組みです。コンピュータが人の行動を先読みして、誰にとっても優しいサービスを提供することができるのではないか。そう期待され、研究論文はたくさん書かれたものの、残念ながら実用化にはほど遠い状況です。

──どうして実用化が進まなかったのでしょう?

一番大きな理由は、使いやすさが考慮されていなかったからではないでしょうか。ノード(個々のセンサー端末)はコンピュータですから、電源が必要です。ほとんどの研究は電池の保ちをよくしようとしましたが、そもそも電池交換が必要だということが間違いだったのかもしれない。いろいろなところにノードを置くなら、周りにあるエネルギーを使って、放っておいても動作するものを作らないといけないのではないか。

そう考えていた2007年頃、ジョージア工科大学のATHENAグループと知り合いました。ATHENAグループは紙の上にアンテナや電子回路を作る技術を開発しており、これをセンサーネットワークと組み合わせたいとお互いの意見が一致しました。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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