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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

合成生物学で、生物学は「見る」から「作る」へ(3)

2010年7月29日

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合成生物学がこれからの生物研究を加速させる

──乳酸生産に特化したバクテリアができたら、生物を利用したプラスチックの生産を大規模にできるようになったりするのでしょうか?

中東:微生物による乳酸生産については、すでに事業化されています。我々の直接的な目標は設計図が書けるようになることなのですが、現状より効率の高い経路で乳酸が作れたり、より付加価値の高い物質を作る微生物を設計することができれば、当然生産に使われることになるはずです。

──合成生物学の未来は明るいようですね。

板谷:実際のところ、合成生物学はまだまだ初期段階です。まだ開始されて数年しかたっていないのですが、欧米では生物学の分野を超えて、工学分野、IT分野との融合が大規模に進んでいます。もともと、ヒトの役に立つものを作るための工学的発想が根底にあるために当然といえば当然です。日本でも間違いなくその方向に向かうでしょう。

間違いなく言えるのは、合成生物学の研究によって、そう遠くない将来、生物学の取り組み方は大きく変化するということです。今までは部分的にしか扱えなかった遺伝子を一括合成できるようになるわけですから、今後は、より目的指向型の研究が行われるようになるでしょう。工業生産や環境浄化、医療など、さまざまな分野で研究が加速すると予想しています。

研究者プロフィール

板谷光泰(いたやみつひろ)

東京大学理学部卒、博士号取得後米国留学。留学後は(株)三菱化学生命科学研究所で20年間基礎研究に従事。巨大DNAであるゲノムを操作する独自の手法を開発する。2006年慶應義塾大学先端生命科学研究所に移籍。合成生物学の勃興とともに、合成ゲノム学の確立に奔走している。

中東憲治(なかひがしけんじ)

京都大学大学院理学研究科卒。その後、明治乳業(株)、HSP研究所、京都大学、岡山県生物科学総合研究所、等。元来の専門は分子遺伝学。2005年より慶應義塾大学先端生命科学研究所。遺伝子の配列、タンパク質や代謝物質の合成、分解量、微生物のふるまいまで、さまざまな測定を行って細胞というシステムがどういう原理で動くのかを理解しようとしている。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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