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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

クモの糸が紡ぐ、繊維の新時代(4)

2010年7月 1日

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ベンチャーを設立して、研究の可能性が広がった

──スパイバー社は慶應義塾大学発のベンチャーですが、大学での研究から変化した点はありますか?

大学の研究者は、メーカーや社会が本当はどのようなモノを求めているのか、ニーズがわかりません。こういうモノを作ったらみんな使ってくれるだろうと自分で思っていても、それはたいてい間違っているんですよ。

しかし、会社として研究するからには、お客さまになるメーカーが求めるモノを提供しないと振り向いていただけません。会社を立ち上げてから、自分たちが今何を作らないといけないのか、ということについてすごくこだわるようになりました。

──研究をしにくくなったということはありませんか?

弊社でも基礎研究は行っていますが、大学発ベンチャーのよいところは基礎研究のかなりの部分を大学側に任せられることでしょう。

研究に関しては、大学にいる時より圧倒的にやりやすくなりました。学生や院生の頃は、10万円や20万円の装置を買ってもらうのも一苦労でしたが、今なら欲しい装置を買って、やりたい研究ができます。

もちろん、大学でも教授になって数千万円単位のお金を動かせるようになれば、研究の自由度は上がりますが、そこまで到達するのに何十年も待つ必要があります。大学院生が何千万円という補助金を取ってくるのは不可能ですから。大学にいた時よりも可能性は広がりました。

研究者プロフィール

関山和秀(せきやま かずひで)

2005年慶應義塾大学環境情報学部卒、2007年同大政策・メディア研究課修士課程修了。同大冨田研究室にて2004年9月にスパイバープロジェクトを立ちあげ、プロジェクトリーダーを務める。博士課程在学中の2007年9月にスパイバー株式会社を設立、代表取締役社長に就任。事業専念のため、2010年3月に博士課程を中退し、現在に至る。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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