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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

シロアリとパンダで、一石二鳥の生ゴミ処理を実現(3)

2009年10月30日

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シロアリ由来の細菌が水素を発生させる

──シロアリがよく水素と結びつきましたね!

結果から言えば、この推測は当たりでした。

僕の教え子が勤めている消毒管系の会社が、商品開発のためにシロアリを飼っているというので、バケツ1杯くらいの巣を提供してもらうことにしました。ところで、シロアリの捕まえ方を知っていますか?

──ピンセットでつまむのではないのですか?

僕も最初はそうやってみたのですが、ピンセットでつかみ損ねるとシロアリはみんなさっと隠れてしまうのです。うまくつかめても、潰れてしまいますしね。

教え子に教えてもらったのですが、絵筆でシロアリをつつけばいいんです。つつかれたシロアリは怒って毛に噛みつきますから、面白いように採れますよ。

さて次に、採取したシロアリから水素を発生させる細菌を分離しようとしました。ところが細菌を培養しようとしてもカビが生えてうまくいきません。改めてシロアリを観察してみると、口内に光るものがある。採取してみると、蟻酸(ぎさん)です。シロアリの体内にいる細菌は、蟻酸への耐性があるのではないか。試しに、培地に蟻酸を加えてみたところ、カビも生えずうまく細菌のコロニーが育ってきました。

100種類くらいの細菌を採取して、調べてみたところ、90種類くらいは水素を発生させることがわかりました。このうち1/3は硫化水素やアンモニア、要するに臭いガスを発生させるので除き、残りから有用な細菌を探しました。

細菌というのは、非常に嗜好性の強い、つまり好き嫌いの激しい生物です。例えば、3種類食べ物を与えたとしたら、どれから食べるかきっちり順番が決まっています。生ゴミのようにどんなものが含まれているかわからないものを分解するにはいろんなものを同時に食べてくれないと困りますから、役に立つ細菌を選び出すのは苦労しました。

それでも何とか生ゴミを分解して水素を発生できる10種類ほどの嫌気性細菌を分離することができました。細菌の研究というのは、10万株調べて、1つ有用な細菌を取り出せれば万々歳という世界。100株調べて10株が当たりというのは、とてつもない確率です。

──シロアリ由来の細菌を使うと、どれくらい生ゴミを分解して、水素はどれくらい出るものなのでしょう?

分解する量より水素発生にかかる時間を重視して、細菌を選びました。生ゴミを投入してから、だいたい5時間くらいでピークを迎え、10時間くらいで反応が終わります。

発生する水素の量は、1gのブドウ糖に対して600mlというところでした。それまでは1gのブドウ糖当たり200mlというのが普通でしたから、これはかなりの効率でしょう。反応時間もメタン発酵の場合の1/20程度ですみます。

ところが水素が発生したあと、残りカス(残渣)がどうしても出ます。コピー用紙をシュレッダーにかけたゴミの場合、うまくいった時で50%、下手すると30%くらいしか分解できないこともありました。何とか、この残渣を分解できないかと考えたのです。

その時に思いついたのが、パンダでした。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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