『世界は、石油文明からマグネシウム文明へ』矢部教授の回答(3)
2009年7月15日
レーザー媒質の改良は可能か?
──媒質を改良することで変換効率が上がるということですが、どういう改良を行うのでしょう?
私たちが使っているレーザー媒質はセラミックで、焼き固める際にどうしてもムラが出てしまいます。そのため、現在は大きな塊から本当によい部分だけを取り出さなければならず、けっこう歩留まりが悪いのです。ただ、製造過程の改良や別の手法も考えており、それほど大きな問題ではありません。実際に媒質の検査も行っていますが、市販の純粋なネオジウムだけの結晶媒質と見劣りしません。
媒質に含まれるクロムの割合を上げることが、変換効率の向上につながることもわかっており、クロムの割合を上げた実験も屋内ですでに行っています。私たちのグループには30年にわたって大出力レーザーの研究を行っている研究者が多数参加しており、実験には自信を持っています。
4㎡の巨大なレンズを低価格で作ることは可能?
──太陽光の集光に使うプラスチック製のフレネルレンズは、4㎡の巨大なものです。こうした巨大なレンズの精度を上げるのは難しいのではないでしょうか?
4㎡のレンズは1㎡角のレンズ4枚を組み合わせていますから、必要な金型は1㎡角のもの1個分です。どう分割して組み合わせるかという設計は必要ですが、4㎡のレンズをいきなり金型で作るのではありません。
レーザーによる超高温に精錬炉は耐えられるか?
──マグネシウムの精錬にレーザーを使うことで、炉が超高温に耐えなくてもよいということでした。しかし、複数のレーザーを集めたら、炉内はやはり超高温になってしまうのではないでしょうか?
これは意外に多い勘違いですね。
例えば、レーザーを1mmの範囲に集光して1万℃になる場合、集光部分から1cm離れれば100℃まで下がるとしましょう(数値はあくまでも例えです)。
レーザーを1cm間隔で当てるようにすれば、レーザーを100本集めたところで全体の温度は100℃しか上昇しません。もちろん、発生する熱を取る必要はありますが、100℃の熱を回収するだけです。
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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」
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