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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

ジェットコースターが街中を走る?! 省エネ交通機関「エコライド」(3)

2009年1月30日

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ジェットコースターでも使われているメカ式のブレーキ装置。こちらは車両側のフィンを挟んで減速させる。

──車体下部には小さな黒いタイヤが付いていますが、あれは何のためですか?

減速時のエネルギーを電気に変換して、車両内部のキャパシタに蓄積するためです。蓄積した電気は、発進時に車輪を回すのに使います。現在はタイヤやキャパシタを車両側に搭載していますが、これらをレール側に置くことで車両をさらに軽量化することができます。

──レールの途中で車両を止めなければいけない状況になったら、どうするのでしょう?

エコライドのレールは、一定距離ごとに「ブロック」として区切られています。1つのブロックには1つの車両編成しか進入しないよう、各ブロックに停止させるための仕組みを用意しています。

──車両を引き上げるためには、ウィンチ(巻き揚げ機)を使っているのですね。

現在は実験のため、ウィンチを使ってワイヤーを引っ張っています。ジェットコースターの場合は、レール上にチェーンが設置されて回転しており、そこに車両のフックが引っかかって引っ張り上げられるようになっています。エコライドでもこういう仕組みになる予定です。

乗り心地の改善と法整備が課題

──実用化に向けてのロードマップはいかがでしょう?

2006年からNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受けて、開発を進めてきました。現在は第一次実験線で台車の乗り心地や制御、運動エネルギーを電力として回収する効率について実験を行っています。基本的なアイデアについては実証できましたから、次のステップでは公共交通機関として成立することを明確化しなければなりません。ジェットコースターと違い、エコライドはお年寄りも利用しますから、乗り心地をよくして、みんなにとって優しいものにしていく必要があります。

そして、一番シビアなのは、国土交通省が認可してくれるか、ということです。何せ、世界で初めてのシステムですから。公共交通機関として成立させるためには、安全性やメンテナンスについてもさらにブラッシュアップしなければなりません。ただ、国土交通省や経済産業省、文部科学省もこのエコライドにはかなりの関心を示しているのは事実です。4年後を目処に実用化したいと考えています。

研究者プロフィール

須田義大(すだよしひろ)

1959年東京都生まれ、1982年東京大学工学部機械工学科卒業、同大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻博士課程修了、工学博士。法政大学工学部専任講師、助教授を経て、1990年東京大学生産技術研究所助教授、カナダ・クイーンズ大学客員助教授を経て、現在、東京大学生産技術研究所教授、情報学環教授(兼担)、鉄道、自動車などの交通システムに関する研究に幅広く従事。日本機械学会フェロー、航空・鉄道事故調査委員会専門委員など。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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