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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

光を当てれば回り出す「光プラスチックモーター」の驚異(1)

2008年11月14日

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光を当てると、モーターも何も付いていない滑車が回転を始めた……。東京工業大学 資源化学研究所 池田研究室が開発した光プラスチックモーターは、まるで手品のようだ。光に反応する高分子材料が、人間の筋繊維よりも大きな力を生み出すのである。光プラスチックモーターの仕組みと未来を同研究室の池田富樹教授にうかがった。


光プラスチックモーターの実験装置。大きいプーリーの直径は1cm程度だ。

電池もモーターもないのに、滑車が回る

──光を当てるだけで動くモーターを作られたそうですが、いったいどのようなものなのでしょう?

ここに大小2つのプーリー(滑車)があります。プーリーにかかっているベルトは、私たちの開発した「光運動材料」です。今、可視光のライトを1つ照射していますが、もう1つ紫外線のライトを点けると……。

──あ、プーリーが回転しました!

光の当て方にコツがあって、上手に回せるのはうちの研究室にも3人くらいしかいないのですけど。実は、私もうまく回せません(笑)。まあ、これはあくまで原理検証のための装置ですから。


光プラスチックモーターが回転している様子。上方から可視光を当てた状態で、右上から紫外光を照射すると、プーリーが回転を始める。

──太陽電池や普通のモーターはなくて、ベルトにただ光を当てるだけで動き出すんですね。とても不思議です。そもそもどうしてこういう装置を作ろうと考えたのですか?

今、化学の世界では分子機械と呼ばれる研究が注目を集めています。これは分子レベルの非常に小さな構造で、光を当てたりpH(酸性/アルカリ性)を変化させるといった外部刺激を与えると、分子が回転したり、ハサミのように開閉したりするのです。

これらの分子機械は学問的にとても面白いのですが、動きを肉眼で観察することはできず、力学的な仕事をさせることもできません。そこで、分子レベルの変化を目に見える力学的エネルギーに変換する仕組みを作りたいと考えました。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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