深海の超好熱古細菌が作る、未来の水素社会 (3)
2008年5月23日
光に当てれば水素が湧く、夢のフィルム
──スーパーヒドロゲナーゼを使った水素生成装置は、どういうものになるのでしょうか?
精製したヒドロゲナーゼを瓶に入れて、差し込んだ電極に微弱な電圧をかけると、水素が発生します。これは、水(H2O)が電気分解されてプロトン(2H+)が発生し、それがヒドロゲナーゼによって水素(H2)に還元されたからです。
私たちは、この仕組みを薄いフィルム状にする研究を進めています。イオン性のポリマーでヒドロゲナーゼを挟み込んだ、多重積層の膜を作るのです。また、プロトンを発生させるための電気分解には、光触媒を用います。酸化チタンでコーティングされた壁などに紫外線を当てると殺菌効果がありますが、あれが光触媒です。酸化チタンは資源量も豊富で安価、加工もしやすいという利点があります。
こうやって作ったフィルムを建物の屋根や壁に貼ったり、洋上に浮かせて太陽光に当てるだけで、水素が生成されます。スーパーヒドロゲナーゼは、熱にも酸素にも強いため、こうした使い方が期待されます。
太陽電池は作った電気をため込んで利用しにくいのですが、水素なら貯蔵も簡単。石油よりも多くのエネルギーを取り出せる上に、燃やしても水しか出ません。
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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」
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