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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

流出重油をどこまでも追いかけるロボットブイ (3)

2008年4月18日

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漂流するゴミの監視にも応用可能

──現在の開発状況はいかがでしょう?

今年の1月~2月に静岡県で海上実験を行い、ターゲットへの自動誘導や、地上局とのデータ送受信に成功しています。ただし、この実験ではネオプレンゴムでできた疑似油を用いており、油を検出するセンサーは使用していません。本物の油を使った海上実験が日本ではできないのです。

4台のCCDカメラで撮影された画像は1枚に合成。二値化し、図形の重心を割り出す。

──どうしてでしょう?

漁業への影響を防ぐための規制が日本にあるからです。

2007年にはノルウェーで3000tの重油流出事故がありましたが、比較的短期間に海上ですべて回収できています。それを可能にした理由の1つは、実際の油を使った海上演習をノルウェーが毎年行っているからだと思います。そのための組織作りや国の支援、漁民の理解が大きいですね。

海に囲まれている日本は、重油流出事故への対策についても、もっと真剣に取り組むべきではないでしょうか。

──ブイのコストは、どのくらいになるのでしょう?

実用機では、ブイ1台の価格を100~200万円くらいに持って行かないといけないでしょう。サイズもコンパクトにし、部品点数も減らして簡略化していくことになります。

──別の用途にも使えたら、コストを下げられそうですね。

はい、いくつかの用途を想定して研究を進めています。ケミカルタンカーが積んでいる化学薬品や、沿岸に漂着してくるゴミをターゲットにすることも考えています。産業技術総合研究所が、赤潮を起こすプランクトンを識別できるセンサーの開発を進めており、ここに私たちの研究室の院生も参加しています。これと組み合わせることで赤潮の状況をリアルタイムに把握することも可能になるでしょう。

進行方向を決めるためのフィンは、2対、計4枚装着されている。

研究者プロフィール

加藤直三(かとうなおみ)

1974年東京大学工学部船舶工学科卒業、1980年同大学工学系研究科船舶工学専攻終了、工学博士取得。1980年に東海大学海洋学部助手、1993年に同大学教授。2003年より大阪大学工学研究科教授。専門分野は流体工学およびロボット工学、主に水中ロボットやアクア・バイオメカニズムに関する研究に従事。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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