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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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樋口真嗣製作総指揮『ロックドリルの世界 地底世界の超機械巨神』

2009年7月22日

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©ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント


大変なものがわが家にやって来た。なにしろ「超機械」である。そして「巨神」と続く。そもそも「ロックドリル」がどんなものか分からないが、3000セット限定という初回仕様版のプラモデルBOX風パッケージに描かれた、ミサイルかビームでも発射しそうな長く伸びた3本の「腕」を持つ異形のマシンがそうらしい。

その背後ではダイナマイトか何かが大爆発し、火山が大噴火して、溶岩がこちらへ流れてくる。左下には溶岩流の上に平然と腕組みして立つ作業着の男。キャプションはこう説明する。

「このDVDに嘉部技師補はついていません。」

ついていても困ると思う。

いつまでも外箱について書いていても仕方ないので、いいかげん中身に話を進めよう。ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントより、7月24日発売のDVD『ロックドリルの世界 地底世界の超機械巨神』のサンプル版を送っていただいたのだった。一応は実用・教養というジャンルになるようだ。

ただしスタッフの顔ぶれがすごい。製作総指揮:樋口真嗣(『新世紀エヴァンゲリオン』脚本・絵コンテ、『日本沈没』『ローレライ』他監督)/監督:田口清隆(『長髪大怪獣ゲハラ』『G』監督)/音楽:安西史孝(『うる星やつら』『みゆき』他)/ボックスアート:開田裕治(ガンダムシリーズのプラモデルパッケージ等)/スチール:小島健一(Webサイト『社会科見学に行こう』主宰にして大人の社会科見学ブーム火付け役。)――といった面々。さらに、ナレーションは池田成志(『天元突破グレンラガン』ロージェノム役)が務める。

こうした強力な布陣により、「特撮未使用にして超特撮的DVD」が完成した。超特撮的DVDってどんなんだ、と当然気になるところだが、百聞は一見にしかず、ここは予告編を見ていただくことにしよう。

トンネル工事の最先端部で、固い岩盤に直径45ミリ、深さ1~2メートルの穴を多数穿ち、そこに火薬を仕掛けて爆破する。そのためのマシンがドリルジャンボ=特殊岩盤破砕鑿孔装置と呼ばれる。本作に登場するのは、古河ロックドリル製の『JTH3RS-190EX』(HD190型油圧ドリフタ搭載/3ブーム2ケージ)と、輸出仕様のウイングブーム型『T2RW-210』(HD210型油圧ドリフタ搭載/2ブーム1ケージ)だ。

地底にトンネルを掘るドリルマシンとくれば、SF人形劇『サンダーバード』を観た世代ならサンダーバード2号のポッドから出動するThe Mole(モグラー)を思い浮かべるが、このような巨大な円錐形のヘッドにらせん状の刃が付いたマシンは現実には存在しないという。だがそんな空想の岩盤掘削装置『D-2000EX』のイラストが開田氏によって描かれ、DVD本編に脱線気味の前振りとして一瞬だけ登場し、さらには「カラー空想ドリル画」としてパッケージに同梱されている。こうしたマニアックなネタへの力の入れ具合からも、製作陣の熱さが伝わってくる。

では、実際のトンネル掘削に使われる機械はというと、「シールドマシン」と「ドリルジャンボ」に大別される。シールドマシン(日比谷共同溝の見学会で実物を見たことがある)は設備投資に膨大なコストがかかり、地下深くの固い岩盤を掘削できないのに対し、ドリルジャンボはシンプルな仕組みゆえにさまざまな岩盤状況に柔軟に対応でき、コスト面でも優れた「最強のマシン」であるという。

本編ではこうしたドリルジャンボの概要と歴史を紹介したあと、いよいよJTH3RS-190EXのお披露目となる。薄暗い格納庫の中、マシンのディテイルにカメラが迫り、スモークと照明が雰囲気を盛り上げる。その後乗り込んだ作業員によって起動され、格納庫からゆっくりと陽光の下に全貌を現すJTH3RS-190EX。3本のブームの先に取りつけられるドリルの刃は、円錐状でも棒状もなく、円柱の先に肉球が並んだような形状だ。これを高速で回転させると同時に、前後にピストン運動させて打撃を加え、打点の岩を粉砕する。さらに大量の水を噴出して砕いた岩の破片を流し出す仕組みだ。

JTH3RS-190EXが3本のブームを自在に動かす様はまるでキングギドラのようだが、続いて登場するT2RW-210は、2本のウイングブームを広げて上へと高く伸ばす様子はトランスフォーマーを思わせる。2台のドリルジャンボを対峙させる演出もまた楽しい。

ここまでが序盤で、中盤の技師たちへのインタビューをはさみ、終盤でいよいよトンネル工事の最先端部=切羽(きりは)での作業の実際を映像がとらえる。そして、「“戦士”ゆえの静かな眠りの刻(とき)」を収めた寂寥感漂うエピローグへ……。後半の詳細を明かすことは控えるが、工事用の機械を扱いながらも壮大なドラマが展開するこの映像作品は、特撮・VFX・メカファンといったマニアックな層の期待に応える力作だ。

副音声では、製作の樋口氏、田口監督、音楽の安西氏が、ゲストの今石洋之氏(『天元突破グレンラガン』監督)を迎え撃つコメンタリーを収録している。当ブログでは過去、安西氏にメールインタビューで協力していただいたご縁もあって、今回もこのDVDの音楽と副音声収録の模様などについてコメントをもらうことができた。次のページで引き続きお楽しみいただければと思う。

(2)に続く

[製品情報]
タイトル:『ロックドリルの世界 地底世界の超機械巨神』
価格:4,935円(税込)
発売日:7月24日
発売・販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
製品詳細ページ

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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