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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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地下マニア要チェック? DVD『日本の地下空間』レビュー

2008年11月25日

chikaDVD.jpg 『日本の地下空間』 Vol.1 Vol.2
発売日 2008/11/26
(Vol.2は12/26発売)
価格 税込3,990円(税抜3,800円)
発売・販売元:エスピーオー
(C)2008エスピーオー


11月にVol.1、12月にVol.2が発売されるが、今回はVol.1のみサンプル版を鑑賞。取り上げられているのは次の5ヵ所で、そのうち3ヵ所は一般の見学も可能なので、情報のあるウェブページへリンクを張っておく。

首都圏外郭放水路
・地下変電所
・NTTとう道
吉見百穴・地下軍需工場
・日本銀行本店旧地下金庫 (見学案内)

「地下変電所」と「NTTとう道」については、映像が公開されるのは初めてだそうだが、お役所が作った資料映像のように淡々と設備を撮影しているだけで、正直なところ面白みに欠ける。一般には見学できない場所なので地下マニアには貴重かもしれないが、それ以外の人の興味をそそるような演出の工夫がないのが残念。

ちなみに、地下変電所については、「都心の、とある寺院の真下」「都内某所」などとぼかしている。しかし、ネット上では写真や地下構造の概念図も含む「東京電力(株)高輪変電所(PDFファイル)」という見学資料(財団法人エンジニアリング振興協会・地下開発利用研究センターが掲載)なども公開されていることだし、Wikipediaの「高野山東京別院」の項にも「地下には東京電力の変電所がある」と書かれているのだから、今更もったいぶっても仕方ないのにと思うけれども、テロを警戒してのことだろうか。

ただし、冒頭の首都圏外郭放水路の映像は、巨大な柱が林立する広大な地下空間をさまざまな角度から丁寧に収めていて、それなりに見応えがある。また、DVD予告サイトのVol.2の予告編動画を見ると、地下空間内を乗り物で移動する映像もあり、こちらの方が動きがあって楽しめそうだ。

地下空間というテーマは、映像作品ではまだあまり取り上げられていないと思うが、写真集では内山英明氏西澤丞氏の作品が有名。両氏の写真はいずれも、圧倒的なスケール感、建築デザインの美しさ、SFの舞台になりそうなクールな感覚、異界につながるかのような非現実的な雰囲気を巧みにとらえたアート性の高い作品になっている。

『日本の地下空間』というDVDシリーズが3作目以降も出るのかどうかは不明だが、もしそうなら内山氏や西澤氏の作品と肩を並べるくらいのクオリティーを目指してほしいと思う。

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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