このサイトは、2011年6月まで http://wiredvision.jp/ で公開されていたWIRED VISIONのコンテンツをアーカイブとして公開しているサイトです。

高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

アートと技術、オーディオビジュアル、メディアをめぐる話題をピックアップ

X-MENスピンオフ『ウルヴァリン』の流出騒動・興収と、写実性が増したゲーム版

2009年5月16日

アメコミヒーロー映画『X-MEN』のスピンオフ作品、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』が5月1日に全米で公開された(20世紀フォックス映画配給、日本公開9月)。公開週末3日間の興行収入で8700万ドルを記録し、2009年度最高の全米オープニング成績を達成。その後米国内で1億3600万ドル、国外との合計で2億5900万ドルまで伸ばしている(BOX OFFICE MOJO、5月14日時点の集計)。

実は本作、完成前のワークプリント(編集途中の本編)がビットトレントのP2Pネットワークに流出するという憂き目に遭っていた。20世紀フォックスの親会社である米News Corp社のCOO、Peter Chernin氏は、情報源を明かさないものの、ダウンロード数が400万件に上ったと発言している(ShowBIZ Data)。

これだけ海賊版が出回ったのにロケットスタートを切ったことについて、「海賊版を観た人も内容の良さを確認したうえで、完成版を鑑賞したいと思って映画館に足を運んだ」というのと、「海賊版を観る層と映画館の客層はそもそも別」という2通りの考え方ができるだろう。実際にワークプリントのコピーを観たというZeroPaid.comのsoulxtc氏は、「特殊効果が加えられておらず、[アクション時の]ワイヤーも見えているので、映画館で完成版を観る必要があると思った」と書き、他の大勢も同じ意見だとしている。

また、海賊版を観たきり劇場に行かない「ダウンロード専門」のP2Pユーザーは、本作が流出していなければ金を払って映画を観たとも考えられないので、映画会社の実質的な損害は案外少ないのかも(だからといって違法なアップロードや海賊版の鑑賞が容認されるわけではないにせよ)。

なお、P2Pではどこかのサーバーから一元的にファイルを配信しているわけではないので、どうやって総ダウンロード数を算出しているのか不明だが、たとえばTorrentFreakが掲載している「2008年にビットトレント上で最もダウンロードされた映画トップ10」では、1位の『ダークナイト』が703万件、2位の『インクレディブル・ハルク』が584万件、などとなっている。この表の件数を基準に考えれば、2009年のトップ10には『ウルヴァリン』が上位に入りそうだ。

話題変わって、この映画をベースにしたゲーム『X-Men Origins: Wolverine Video Game』(5月1日米国発売)の予告編について。今回のブログの下調べをしていて初めて見たのだが、主演ヒュー・ジャックマンやセイバートゥース役リーヴ・シュレイバーの顔と表情が驚くほど写実的だ。販売は米Activision社で、制作はその子会社のRaven Software社ほか。パフォーマンス・キャプチャー技術の向上がうかがわれ、俳優の肖像権がライセンスされた過去の「素顔のヒーローもの」ゲーム――たとえば『THE MATRIX:PATH OF NEO』のキアヌ・リーブス(GAME Watchの記事にキャプチャ画像あり)――と比べても、この4年ほどで着実に進歩していることが見てとれる。

当ブログで過去に何度か不気味の谷現象に関するエントリを書いたが、パフォーマンス・キャプチャーを使ったCG映画『ポーラー・エクスプレス』『ベオウルフ/呪われし勇者』などに比べても、不気味さが薄れている気がする。

このクオリティーなら、過去にワイアードの翻訳記事で取り上げた映画制作シミュレーションゲーム『The Movies』に、将来のバージョンで実際の俳優のキャプチャーデータを使った展開もあり得るのではないかと思った。日本の市場を考えると、グラビアアイドルのキャプチャーデータを使ったイメージビデオ作成ゲームなどというのもありか。俳優やアイドルのデータは有料のオプションで追加できるようにするとベターかも。さらに、金に糸目をつけないリッチなゲーマー向けのプレミアムオプションで、ゲーマー自身をパフォーマンス・キャプチャーして「ゲーム内でアイドルと共演!」なんてサービスも受けるのでは!?


[公開情報]
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』
9月TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
公式サイト:http://movies.foxjapan.com/wolverine/
20世紀フォックス映画配給

[関連サイト]
『X-Men Origins: Wolverine』公式ゲームサイト

[関連記事]
PopSciの「不気味の谷ツアー」動画:日本の技術も多数登場(当ブログ)
「不気味の谷」を越えた? Image Metrics社のフォトリアルなCGアニメ(当ブログ)
『マシニマ』映画を簡単に制作できるゲーム

フィードを登録する

前の記事

次の記事

高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

過去の記事

月間アーカイブ