No. 14 アナキズム批判 その3
2008年2月20日
(これまでの 白田秀彰の「現実デバッグ」はこちら。)
さて、身近な若い人たちに「日本国政府についてどう思ってるの?」と訊くと、大体において「どうでもいい」という返事がかえってくる。「ああ、こういう被治者ばかりだと統治も楽そうだなぁ」と私は思う。こういう人たちばかりなら、私も独裁者をやってみたい。きっと、私一人による私一人のためのステキな日本国ができるだろう。ほわわーん。とりあえず、自衛隊を親衛軍に改編して、大型二足歩行ロボットによる機械化兵団を作ろう! 戦力としてまったく役に立たない平和的な軍隊! 萌え〜。
で、そういう若い諸君に「じゃ、どうするの?」と訊ねると、大体の場合、「英語を勉強して外国に行きますから大丈夫です。日本が滅びても○○国で生きていきます」「国際的に通用する○○資格を取得して、どこの国でも生きていけるようにするつもりです」というようなお返事を頂く。これは、とても優秀な学生さんたちの自信のなせる返事だと思う。自分に能力がないと自覚している優秀でない学生さんたちの場合は、「関係ない」とか「どうでもいい」とかいう返事を頂く。たぶん考えるのもメンドウか、あるいは考えると怖くて仕方がないので考えないようにしているんだろう。
でね、優秀な学生諸君に言っておくよ。歴史を学んでおくれ。そして祖国を失った民族がどれほど他民族から虐め抜かれて過酷な歴史を生き抜かなければならなかったかを学んでおくれ。皆さんが大嫌いな日本国政府が発行してくれる皆さんのパスポート。なんて書いてあるか読んでみて。日本国政府が、外国における皆さんの安全を保障するよう、外国政府に要請しているよね。祖国が亡くなったら、誰が異邦人に囲まれている皆さんの安全について心配してくれるの? ケンシロウみたいに、己の力のみで自分や家族を守れるだけ、皆さんは強いの?
「今は国際理解が進んでいて、外国のみんなは平和的ないい人たちだから、日本が滅びても大丈夫だよ!きっと助けてくれるよ! そっちのほうが私たちは幸せになれるよ!」と思ってる人たち。なんで同胞によって運営されているハズの自国政府は信用できないのに、見も知らぬ外国の皆さんをそんなに信頼できるのか、根拠を私に教えてくださいな。まあ、福田さんもブッシュさんも「知らない人」という点ではみんな同じなんだけどね。でも、オフクロの味について語るとき、福田さんの方がちょっとだけ我々と共感できる気がしませんか?
国際化した一流企業に勤めることができれば、日本なんてどうなってもかまわないと思っている人たちに言っておくよ。企業は利益を最大化することが存在目的だ。だから、皆さんをその企業が大事にしてくれるのは、皆さんがその企業の利益に貢献する限りにおいてだよ。皆さんが持っているいろんなものを失っていき、最後に皆さんが「人そのもの」としての存在となったとき、みなさんに対して責任を持つ主体は、いまのところ国家しかないんだよ。もちろん、皆さんがなんらかの宗教共同体に参加しているなら、その共同体が救済してくれると思うけど。
白田秀彰の「現実デバッグ」
過去の記事
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- No. 24 教育制度批判 その72008年4月30日
- No. 23 教育制度批判 その62008年4月23日
- No. 22 教育制度批判 その52008年4月16日
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