日本人はホンモノのブランドケータイを…、じつは知ってました
2008年1月29日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら)
先々週のこのブログにて、世界最高峰のプレミアムケータイ「VERTU」を紹介した。その上で、『日本には同様な「本物」のプレミアムモデルが無い』だとか、はたまた『「漆塗りケータイ」でも作ったらどうか』など、思うままに書いてしまったのだが……
なんと昨日、ソフトバンクモバイルが「1000万円の超プレミアムモデル」や「漆塗りケータイ」を次々に発表。驚きました(笑)。正直なところ、こういったものが発売されるという情報を事前につかんでいたわけでは決してないのであしからず。先々週の記事は中国を始めとする世界のケータイ事情をもとに、私の率直な気持ちで書いた文言である(仮に事前にこれらの情報を得ていたら、立場上解禁日まで噂さえできない)。ということで、先々週の記事のタイトルは撤回(すみません)。
ソフトバンクモバイルが発表したプレミアムモデルというのは、ティファニーとのコラボレーションにより、プラチナのベースに約400個(計20カラット程度)のダイヤモンドを並べたという超プレミアムモデルで、限定10台(そのうち1台は上戸彩さん行きが決定)、価格は1,000万円というモデルである。孫正義氏によれば、表参道のソフトバンクショップ直営店と、銀座のティファニーショールームに展示を予定してるそうだ。私も欲しいが…、買えるわけがない(笑)
これはCGで作成したティファニーモデルのイメージだそうである。
そして「京漆塗」や「京友禅」などの「和」のテイストをオプションで用意した端末も登場した。
先々週の「漆塗りケータイ」発言だが、私は漠然とかつての日産自動車インフィニティQ45(初代)を思い出していた。高級乗用車のインパネにはウォールナットなどの木目パネルがおごられるが、インフィニティQ45には「漆塗りパネル」がオプション設定されていた。「ジャパン!」って感じでいいではないか。そんなノリがケータイにも欲しいと思っていたところだ。
ソフトバンクモバイルのこの和テイストを楽しめるモデルは、「THE PREMIUM TEXTURE 823SH」。交換可能な表面パネルをソフトバンクでは「テクスチャー」と名付けたようだ。このテクスチャーにはクロコダイルなどの本皮や本木目などが用意されるほか、さらに高級なオプションとして「京漆塗」「京友禅」が用意されるという。うーん、これも欲しいかも。
京漆塗モデル、イキだね。こんなモデルを海外で自慢してきたいよね。寛文元年(1661年)創業の京漆器の老舗「象彦」とのコラボレーション。
今回のソフトバンクモバイルのニューラインアップへの力の入れようは半端ではなかった。その数は計16機種57色(ディズニーモバイルを含む)。3キャリア中、ダントツである。プレミアムモデルに続いて、私が個人的に気になったモデルをピックアップしよう。
じつは新製品発表会で一番惹かれたのがコレ。“インターネットマシン”と愛称の付けられた、922SH。一般のケータイと、スマートフォンの間を埋めるようなモデルである。
閉じた状態の922SH。これで音声通話が可能。表面はタッチパネルで、電話帳呼び出しなどの操作が可能。
開くとフルキーボードが現れる。3.5インチワイドVGAディスプレイでPCサイトもそこそこ見やすい。ワンセグも付いている。
私は日ごろ音声通話用にauのINFOBAR2と、メール用にソフトバンクモバイルのX02HTを持ち歩いている(このほかに、TPOに応じて各キャリア、数端末がカバンに放り込まれる)。経路検索やナビゲーションなど、ケータイのコンテンツを操る場合はINFOBAR2(などの一般のケータイ)が便利だが、PCのメールの読み書きや、PCのサイトを操るにはやはりスマートフォンが重宝する。なんとかこの2台でこなすことを1台に集約できないものかと思っていたのだが、922SHはまさにその目的を果たしてくれそうな端末である。
922SHは一見スマートフォンっぽいのだが、どちらかといえば一般のケータイに分類されるものである。ワンセグも付いているし、Y!ケータイが使える。ようするにフルキーボードが付いた普通のケータイと考えるべきだ。ケータイメールと同様にPCメールも扱える新機能「PCメール」に対応している。POPの自動チェックもしてくれるので、これでわざわざケータイのアドレス宛に転送設定しなくてもよくなる。発売が待ち遠しい1台である。
さて…
ソフトバンクモバイルのモデルにばかり目を奪われてしまったが…、じつは同日、KDDI(au)の新製品発表会も開催されていた。
auの春モデル。個々の端末は完成度は高いと思うが、形状とか個々の機能で飛びぬけた感じはしない。みなさんは、どれが欲しいと思いますか?
auの春モデルで興味を引いたところといえば、たとえば「電子ペーパーディスプレイ」を背面パネルに備えたW61Hや、初のGSM方式とのデュアルモデルとなったW62Sなどといったところだ。
電子ペーパーディスプレイ装備のW61H。背面パネルの模様が95パターンから設定可能だとか。
ソニーエリクソン製GSMデュアル端末、W62S。外側パネルはジュラルミン製。
端末のほかに、長時間の動画を楽しめる「LISMO Video」や、スポーツ関連のトレーニングデータの管理・サポートツールとして活用できる「au Smart Sports」なども積極的にアピールしていた。また「LISMO」を楽しむためのBluetoothヘッドセットや、「au Smart Sports」を活用してジョギングする際に最適なケータイポーチ、コンテンツなども用意されていた。KDDIによれば、ケータイを中心とした生活周りまでのトータルコーディネートということだろう。
GPS機能を活用して、移動距離を算出し、消費カロリーなども計算してくれる。PCで履歴も確認できる。はい、確かに私は思いっきりメタボリックですが…。
私のこの連載は報道記事ではないし、あくまでもブログという位置づけである。しかも「ケータイ開国論」というテーマが掲げられているコラムである。そういう観点から、ここではあくまでも個人的な考えや感想を綴らせていただくことを先にお詫びしておきたい。
KDDIも健闘しているのが、とはいえどうも「決定的なインパクトがない」というモデルばかりだ。ズラッと並んだ端末を見ると、KDDIは例によって「折りたたみ型」または「スライド型」モデルのオンパレードである。それらの端末は、個々の完成度は高いのだが、全然楽しさが伝わってこないのである。なぜだろう?
それはたぶん、こういうことだ。ソフトバンクモバイルとKDDIの両社の新端末を比較して感じたのだが、おそらく両社の企画担当者たちの端末への思い入れに温度差があるのだろう。ソフトバンクモバイル側は、ケータイ端末が好きな人たちが徹底的にこだわり続け、端末を企画している。端末によっては孫正義社長自らプロジェクトマネジャー的な立場に立って、自分が欲しいと思う端末の商品化を目指したようだ。
一方、KDDI側はどうも端末にはそれほど熱意を持っていないのではなかろうか。端末にこだわりが感じられないのである。もちろん端末メーカーは与えられた要件の中で最大限の仕事をしていると思う。その要件というのも、ときにはコスト削減などの「制約」のほうが多いのではないだろうか。ソフトバンクモバイルの端末はどちらかというと「のびのび」と端末メーカーが工夫を凝らしているように思うのだが、auの端末は端末メーカーの努力の次元が違うような気がするのである。
またKDDIは、むしろ端末よりもコンテンツのほうばかり(とくにLISMOなど、収益の出るコンテンツ)に力を注いでしまっている。もちろん「ケータイで音楽を楽しむ」人たちにとっては、それはKDDIのほうが楽しいサービスなのかもしれない。もちろんそういうユーザーがいて当然だ。でも大半のユーザーは、ケータイはケータイとして使っていると思う。私もケータイで音楽は聴かない。だからLISMO云々言われても、押し付けがましさを感じるだけなのである。そんなことよりも、もっと楽しい端末を作ってくれ、とKDDIには言いたい。ケータイの基本は、やはり端末でしょ。
KDDIの記者会見で、最後に新しいテレビコマーシャルが紹介された。キャッチフレーズは『auの庭で。』。
そのコンセプトはこういうことらしい。
「auは庭になります。そこは、ワクワクすることが起こる庭、垣根もない、可能性いっぱいの庭… (中略) あらゆるものがシームレスにつながっていく。auは、人々の生活に寄り添って進化するプラットフォーム(場所)を提供して、新しい価値を創造していく。…」
KDDIは、コンシューマ向けサービスは「au」というブランドで展開していくとしている。ということは、このコマーシャルでいう「庭」とは、KDDIが提供する各種プラットフォーム(ケータイ、ブロードバンド、固定網、プロバイダなど)のことを示していて、「庭にお出でよ!」というメッセージには、「すべてKDDIのプラットフォームに切り替えれば、より便利でお得」ということを暗に盛り込んでいるように思えるのである。
これって…、FMCには違いないが、しかしオープン化とはまったく逆行した考え方だ。むしろこれでは、テレビコマーシャルを観た視聴者が「これがプラットフォームのオープン化のことね!」なんて勘違いしかねないのでは(あ、それが戦略か?)。
ともあれ、皆さんはこのコマーシャルを見てどう思われるだろうか。1月31日より放映されるそうである。
ちなみに私はソフトバンクモバイルの回し者ではありませんので念のため。どのキャリアが一番好きなのかと聞かれたら…、たぶん旧セルラー・IDOが大好きでした。
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木暮祐一の「ケータイ開国論」
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