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木暮祐一の「ケータイ開国論」

ケータイの最新情報を押さえながら、今後日本のモバイルサービスが目指すべき方向を考える。

中国の「何でもあり!」ケータイ端末事情

2008年1月22日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら

  先週は、超高級ケータイブランド・VERTUの話を書かせていただいたが、本日はその対極(?)ともいえるケータイ端末についてご紹介しよう。

 先週は中国に出張していたのだが、滞在先のホテルにて何気なく通販チャンネルを眺めていたら、突然飛び出してきた商品がコレだ。なんと「超高級ケータイ」だそうである。このケータイを持っていれば、とにかくモテモテ、会社では社員から羨望の眼差しを受け、夜の社交場では店中の女の子が擦り寄ってくる…。そのケータイの筐体は18金、縁取りには218個のダイヤが埋め込まれ、エグゼクティブ感を漂わせる…。

 うーん、見た感じ、あのVERTUにそっくりだけど、VERTUがこんな下品な売り方をするのだろうか? いや、そんなはずはない。

 そしてその端末の価格は…、5,888元也!(約88,500円) いくら特価販売の通販チャンネルとはいえ、VERTUをそんな安価に売るのはおかしいでしょ? そうして、よくよくVERTUと比較してみると、外形は似てはいるものの、中央段のボタンの向きが逆さまではないか。それにロゴ類もどうみてもおかしい。だいたい、何だか安っぽい。

 ということで、これはVERTUのコピー商品。確かにどこにも「VERTU」という言葉は出てこないし、VERTUから突っ込まれたら、これはオリジナルのケータイ端末だと言い張るのであろう。中国の著作権や意匠権への考え方は、そんなものなのである。


中国の通販チャンネルで登場したVERTUそっくりのケータイ端末。これでも26万色液晶、メガピクセルカメラ、WAP/GPRSなど、機能的には申し分なく使えるモデルに仕上がっているようだ。


 そして中国の街中を散策しながら、ケータイ販売店をウィンドウショッピングしていると、色々なユニーク端末に出くわす。衝動買いし、日本に持ち帰ってきた端末の一部をご紹介しよう。

 まず、携帯電話の元祖ともいうべき、モトローラ社のDynaTac(1984年発売)のミニチュア(?)のようなモデルを発見。DynaTacは元祖携帯電話の象徴とされ、中国でも「水壷(水筒)」という愛称が付けられ大流行したモデルである。このDynaTacに、現代のケータイに求められる各種最新機能を搭載し、ミニサイズで復刻させたようなデザインだ。写真では分かりづらいが、本体サイド両側のスピーカー穴にはモトローラ社のロゴにそっくりのマークも入っている。当然、モトローラ社の承諾など得ずに商品化したのだろう。店頭で値段交渉し、700元(約10,500円)でゲット!


背景に写っているのは筆者秘蔵のGSM DynaTac。DynaTacをモチーフにしたのは明らかな端末だ。シャレで使えばそれなりにウケが良さそうなモデルである。


 こんな端末もあった。一見、ミニカー風。BMWに似たロゴ(本当のBMWのロゴとは青白の位置が逆)とキドニーグリルが付けられたこのミニカー、ひっくり返せば、なんとケータイである(笑)

 十字キーはステアリング風、マイク部には「B.M.W」というロゴが入っているが、ピリオドが付いているから、これは何かの略称であり、自動車メーカーのBMWとは関係ないと言い張るのであろう。ディスプレイはタッチパネル方式で、メガピクセルカメラも搭載、機能的にも申し分なさそうな端末だ。着信時にはヘッドライト、テールライトが明滅する。

 このミニカータイプのケータイはあまり流通していないようで、価格交渉にもあまり応じてくれなかった。結局1,000元(約15,000円)で妥結し購入してきた。

 中国にはこういったオモチャのようなケータイ端末が多数流通しており、およそ1,000元前後で購入が可能だ。日本の感覚では必ずしも安い価格とはいえないが、中国では新品で購入できるケータイ端末の最低ラインが1,000元前後だろう。ノキアやモトローラといった舶来ブランドになると4,000~6,000元、さらにスマートフォンになれば10,000元ぐらいの値が付くものもある。

 日本では、ほとんどのケータイ端末は通信キャリアのブランドで発売される。端末メーカーが独自にオリジナルケータイ端末を発売することはほとんどない。一方、中国はメーカーブランドが主体だ。アングラなメーカーまで入れると、いったい何社のメーカーがひしめいているのか、数えることもままならない。とはいえ、このようなアイデア勝負な端末もじつに多く、ケータイ端末を選ぶ側にしてみればバリエーションが多くて楽しいことこの上ない。ただし、製品の品質や保証などをしっかりと見極めた上で購入することになり、ユーザー側のリテラシーも求められるところだ。

 日本でもようやく販売奨励金見直しが着手され、端末メーカーが独自にケータイ端末を販売できる体制が築かれようとしている。ここで紹介した著作権、意匠権無視の端末が出るようなことはないにしても、ユニークなモデルが多数登場してくれることに大いに期待したいものだ。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学客員教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『Mobile2.0』(共著)、『電話代、払いすぎていませんか?』など。HPはこちら

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