年末年始にも役立つ?! ケータイでメールを操る究極術、ほか
2008年12月29日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら)
激動のモバイル業界、ケータイサービスの「開国」に向け、今年も色々な動きがあった。そしてこの大きな躍動は来年にも続いていく。本コラムではケータイサービスのオープン化に向けた動きを様々な視点で捉え、綴ってきた。年末に当たり、今回はちょっと息抜きがてら筆者が関心を持ったコンテンツサービスを2つほど紹介したい。
IMAP方式に対応しGmailの機能を活かせるアプリが登場
インターネット環境が日常生活に浸透し、ケータイも1人1台まで普及を遂げたことで便利になったという反面、仕事とプライベートの境目が曖昧になってきたと感じる方も多いはず。メールチェックはオフィスに居る時だけやれば良かった時代はもはや昔のこと。自宅にパソコンがあればついついメールを受信してしまったりして、プライベートタイムなのかオフィスアワーなのか何がなんだかわからなくなってしまったり…。
そんな仕事漬けの方々で、「さすがに年末年始ぐらいはパソコンに向かわずに過ごしたてみたいのだが、でもやっぱりメールが気になって落ち着かない」なんて人にオススメしたいのがケータイでメールを読み書きする術。
たとえばスマートフォンを活用すれば、パソコンで扱うメールの読み書きも簡単なのだが、でもまだ多くの方は一般的な「ケータイ」端末を使われているはず。その一般的な「ケータイ」でパソコンのメールの読み書きをするためのサービスも多数存在するが、実用的と思えるサービスは少なかった。
ところが、ビジュアライズが12月22日にリリースしたGoogle社のGmail専用メーラーiアプリ「EViS」(http://evis.mobi/)はなかなか優れものである。これまでケータイをメールクライアントとしてメールを読み書きできるコンテンツやアプリは、いずれもPOP方式のものばかりであった。ところが「EViS」は数少ないIMAP方式を採用したiアプリであり、サーバー側でメールを管理できるGmailの特徴を最大限活かしながら「Gmailをケータイで操れる」サービスだ。(ただし現在対応しているのはNTTドコモのFOMAのみ。今後他キャリアへの展開も期待したい)
昨今メールにアクセスする環境が多様化し、同じメールアカウントをオフィスや自宅、そしてモバイル環境など様々な場所から読み書きする機会が増えている。従来のPOP方式のメールアカウントやクライアントであると、メールサーバに残されている新着メールをいずれのパソコンやモバイル端末にもダウンロードせざるを得なくなる。ようするに1度読んだメールも、他のパソコンやモバイル端末からアクセスすると、もう1度読むことになる。
しかし、GmailなどIMAP方式を採用したメールサービスであれば、メールの管理は原則としてサーバー側で行うため、メールの未読既読の別や、メールのラベル管理(フォルダ振り分けに代わる新しいメール管理方法)などが、どのパソコンやモバイル端末からアクセスしても同じ環境で利用できる。過去のメールも消去せずにアーカイブしておくことができ、検索によって過去のメールデータを探し出すのも容易だ。こうした理由からGmailを活用するユーザーが増えてきている。
ところが、このGmailをケータイ上で操るための画期的手段がこれまで存在しなかったのである。もちろんスマートフォンを活用すれば、パソコン上でGmailを利用するのと同じように、メールの操作は可能だ。あるいはiPhoneでもGmailの特性を活かして簡単に利用できる機能が備えられている。しかし、一般的なケータイでGmailを扱うには、ケータイサイトを通じてHTMLベースでアクセスするか、POP方式のメーラーアプリしかなく、Gmailのせっかくの特徴を活かしてケータイで操作する方法が無かったのである。
「EViS」は、専用サイトからダウンロードし、初回起動時にGmailのID、パスワード等を設定しておくだけで簡単に利用可能である。次回以降「EViS」を起動すれば、Gmailで設定していたラベル情報や、未読・既読の別などの情報がそのまま引き継がれた状態でメールを読み出してくれる。
あまり知られていないが、技術ベンチャーであるビジュアライズは、かつて市販携帯電話端末にプリインストールアプリを提供していたこともある信頼できる開発会社だ。また、念のためGmailのID、パスワードの管理はどうなっているのか取材したが、ユーザーが端末上で入力した内容は端末内のアプリだけで保管され、通信の際にGoogleのサーバーにその情報が伝達する仕組みなっていて、ビジュアライズ社のサーバーにはデータが残らない仕組みになっている。EViSは安心して利用できそうだ。
トレンドは「サーバーで管理」する方向へ
こうした「ケータイでメールを読み書きする」ことはいまさら珍しいことではないが、IMAP方式のGmailの普及によってビジネスでのメールの使い方が大きく変わろうとしている。とくにポイントとなるのは「サーバーで管理」することだ。
前述の通り、メールを読み書きする環境はオフィスや自宅にとどまらず、移動中も含め様々な場所で利用されるケースが増えてきた。こうした「どこからでもメールを読む」といった利用シーンを想定すると、従来のPOP方式のメールサービスよりも、メールをサーバー側で管理するIMAP方式のほうが使い勝手が良いと考えられる。メール管理の状態が、どこからアクセスしても同じ環境で使えるからだ。通信技術の進展により、モバイル環境でも高速なデータ通信が可能となり、こうした「サーバー側でデータを管理する」という使い方に徐々にシフトしていくものと思われる。
とくにビジネスのICT化の進展でメールの活用は増える一方で、多くの方が「メールの処理」に相当な時間を費やしているはずである。そういうビジネスマンこそケータイを上手に活用し、「移動中などの空き時間にメール処理してしまう」のがスマートだろう。筆者の場合も、ビジネスに使う多数のアドレス宛メールはすべてGmailに転送してしまい、iPhoneやEViSを活用して移動中にGmailのチェックをしている。
簡単な返事で済む要件はその場で処理、重要な案件でデスクから返信が必要なものにはスターを付ける(メールにフラグを立てる)、不要なメールは削除、といった処理を移動中に済ませておく(スター付けや削除など、サーバー操作が必要な機能はiPhoneでは可能だがEViSは今のところ完全対応していない。今後の機能追加に期待!)。こうすることでデスクにおけるメール処理は最小限の時間で済ませることができるようになり、仕事の効率を上げることができる。
本題に戻ると、そんなわけで年末年始の休み中も「メールが気になって落ち着かない」という仕事人間には「EViS」とGmailを活用することをオススメしたい。これで少なくとも正月中にノートPCを持ち歩く手間から開放されること間違いなし!(まあ、そんなに仕事しなくてもいいと思うんですけど)
オマケ:正月の暇つぶしに「リバースオークション」
年末にリリースされたケータイ関連サービスで、もう1つユニークなものをご紹介しておきたい。
ナノ・メディアがリリースした「ラキオク」(http://rakioku.jp/)は、「単独の最安値」入札者が商品を落札できるという「リバースオークション」サービス。iモード、EZweb、Yahoo!ケータイの公式サイトとしてスタートしている。
オークションといえば最高値を入札した人が商品を落札するものだが、この「ラキオク」の場合は、「単独の最安値」で入札した人が落札者となる。たとえば、本来数万円するような高額商品であても、たまたま自分が落札した金額が「他の入札者がいない金額」で「最安値」であれば落札できてしまう。これまでの「ラキオク」の実績では、プレイステーション3が210円、ソニーBRAVIA液晶テレビが975円、ロサンゼルス旅行が565円などなど、驚くような金額で落札されるケースが出ている。もはやオークションというよりは、リアルタイム抽選会に参戦しているようなサービスだ。
この「ラキオク」だが、出品されている商品は、じつはユーザーが掲載しているものではなく、スポンサー企業からの提供商品が主体。こうしたスポンサー企業からの宣伝費用で運営されている。また、ユーザーが無尽蔵に入札できてしまうのでは落札の可能性は遠のくばかり。このため、参加するユーザーには入札できる件数の制限が設けられている。「ラキオク」では入札の権限を「ビット」という単位で表しているが、一般の無料参加ユーザーには入札の権利として5ビット(つまり5回入札が可能)が与えられる。さらに有料会員登録すると20ビットが持分となる。この持分は、オークションが終了したり、入札を取り下げれば、また他の入札に活用することができる。
このリバースオークションをさらに白熱させる仕組みが、「入札の取り下げ」が可能なこと。自分が入札している金額に、他のユーザーが何人入札しているかを閲覧することも可能。他のユーザーが入札しているので、その金額での落札の可能性が無いというわけではない。オークション終了直前に入札の取り下げがあって自分だけが残る、というケースも考えられる。
裏ワザを教えてしまえば、たとえば自分の持てるだけのビットを費やして同じ金額に多数の入札を行い、見た目に「多数のユーザーが入札していて期待が持てない金額」と見せておく。こうすることで他のユーザーの入札を阻止し、オークション終了直前に自分の1件の入札を残して他の入札を取り下げてしまう、なんてこともできる。
何とも新しい感覚の懸賞ゲームだ。
木暮祐一の「ケータイ開国論」
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