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木暮祐一の「ケータイ開国論」

ケータイの最新情報を押さえながら、今後日本のモバイルサービスが目指すべき方向を考える。

動き出したMVNO、後に続く新参入にも期待!

2007年11月13日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら

 10月3日に当ブログに掲載したコラムにて「MVNO」について触れた。「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator)とは、既存の通信事業者(MNO=Mobile Network Operator)から通信インフラを借りてサービス提供を行う通信事業者のこと。

 じつは昨日、ソフトバンクモバイルとウォルト・ディズニー・ジャパンが協業による新たなケータイサービス「ディズニー・モバイル」を開始するという発表を行ったが、この「ディズニー・モバイル」がまさにMVNOなのである。これほどコンセプトが明確で、分かりやすいMVNOは他になかろう。ディズニー・モバイルの噂は旧ボーダフォン時代から聞こえてきたが、ようやく正式な発表にたどり着いたようで、これは大変喜ばしい。ディズニーのキャラクターを端末やコンテンツにふんだんに活用し、ディズニーランドを始めとしてディズニー商品を扱うショップ等でケータイ端末の販売も取り扱い、ディズニーファンにサービスを利用してもらおうというコンセプトであろう。

 北米ではすでにディズニー・モバイルがMVNOで事業展開しているようだが、日本ほどユニークなコンテンツビジネスが十分に展開できていないようで、苦戦していると聞く。その点、日本では3Gネットワークが十分に普及しており、ディズニーの公式サイトも根強いファンに支えられているので、案外大成功を収めることになるのではなかろうか。NTTドコモやauを利用しているユーザーであっても、熱心なディズニーファンであればディズニー・モバイルに乗り換える可能性は高い。ディズニー・モバイルの加入者は、すなわちソフトバンクモバイルの加入者としてカウントされることになるであろうから、これで着々とソフトバンクモバイルがシェアも増やせるわけだ。来春にはサービスインするようだが、どのような端末が登場するのか、どのような独自サービスが展開されるのか、さらに料金はどうなるのかなど、期待に心が踊るのは私だけでないだろう。楽しみである。

 そしてディズニー・モバイルに続く形で、今後も楽しいMVNOが多数登場し、ケータイサービス全般が活性化していくことに期待したい。

 さて、もうひとつの昨日のトピックスにも触れておこう。auは、新たにケータイ端末を購入するユーザーを対象に、端末が高価な代わりに、基本使用料を安く抑えられる「シンプルコース」を昨日から導入開始した。私も長年auを(も)使っているので、最適な料金プランは何がよいのかを改めて計算してみた。

 MVNOなどのモバイルビジネスを活性化させるために、総務省が示したプランを受けて打ち出されたのがこの「販売スタイルや電話料金の見直し」だったわけだが、auの新料金プランを改めて試算してみると、基本使用料を安く抑えられるはずのプランが、じつは全然「お得」でないことが判明した。このauの「シンプルコース」の場合無料通話分がない上、2年契約を前提に基本料が半額になる『誰でも割』も使えず、結局のところ従来どおりの料金プランを継承した「フルサポートコース」を選択したほうが、どう見ても得であることが明白なのである。auの「シンプルコース」でメリットが得られるのは、ほとんどケータイを待ち受けにしか使っていない、しかも買い替え頻度も非常に少ない、まさに「ケータイをあまり使わないユーザー」がターゲットなのである。

 おそらく今回のauの新施策によってメリットを享受できるのは、本当に1~2割のわずかなユーザーだけだ。しかもARPUの低い、それほどKDDIの収益に影響の無いユーザーにのみメリットが出る形になっている。ひどい話だ。早くauユーザーには気づいてもらいたいものだ。「一番お得」とか「顧客満足度1位」など信じているユーザーに、じつは「必ずしもそうでないよ」と声を出して言わせていただきたい。私自身、旧IDO開業時から愛用しているファンではあるが、これまでauには散々な仕打ちを受けてきた。「ヘビーユーザーは放っておけ」というような施策には本当に頭に来ている。とにかくauの電話料金だけは、どうプランを組み直しても、この数年ちっとも安くならないのである。

 一方、11月26日から導入が始まるNTTドコモの新施策は、新たに始まる「端末は高いが、電話料金は安くなる」プランのほうがお得になるよう設定されている。また端末の購入に割賦販売の仕組みも導入されるので、結局持ち帰り価格は0円に近くなるようだ。こうなると、年末商戦はNTTドコモとソフトバンクモバイルにユーザーが流れ、auは惨敗、みたいな結果になってしまうのが目に浮かぶのは私だけであろうか。

 ちなみに、ケータイ販売店に現況を伺ってきた。新施策によってケータイの買い控えや、買い替えサイクルの長期化を懸念し、さらに販売店の淘汰まで始まるのではないかという噂も流れていた。ところが販売の仕組みが変わることによって、「端末価格が高騰する」というような報道をマスコミ各社が流してくれたおかげで、9月~10月のケータイ端末販売は絶好調だったそうだ。なんだ、ケータイは相変わらず売れていたのか(笑)。

 そうこうして新施策が始まってみれば、実際の購入価格は横ばいか、むしろ割賦販売の導入でもっと気軽に買えるようになりそう。蓋を開けてみればこれまで以上にケータイが買いやすくなって、ますますケータイ販売店が忙しい…、なんて年末商戦の様子を思わず想像してしまったのだ(以上、東京の併売店の談より)。

 ともあれ、auの新施策には納得できないが、「INFOBAR 2」は早く欲しい! と考える今日この頃である。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学客員教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『Mobile2.0』(共著)、『電話代、払いすぎていませんか?』など。HPはこちら

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