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合原亮一の「電脳自然生活」

環境問題から生き方まで、地球ととことん付き合う方法論を模索する。

何とか免除に。しかし落とし穴は塞がっていない

2010年9月13日

話の出発点へ

3週間以上かかったが、先日ソフトバンクから連絡があり、高額請求は免除されることになった。対応のミスで、定額利用できるにも関わらず、高額になる利用方法を説明したことについて謝罪があったとのことだった。実はスタッフから報告のメールがあった時はパソコンが気を失っていて、そのメールを読むことができず、もう何日か余分に気を揉むことになってしまった(それについては別途報告する)が、ほっと一安心だった。

最終的に定額料金を利用日数分支払えば良いことになった。こちらは言われた通りに使っていただけなので、当然の結論とも思うが、時間がかかったということは、ソフトバンクでも検討する要素が多かったということだろう。免除にならない危険性も高かったと思われる。たまたま事前に使い方を確認していたので、免除になったが、こうした事故が発生する危険が減ったわけではない。何も聞かずに海外に出かけ、同じ使い方をしていれば、当然支払え、と言われかねなかったのである。つまり、落とし穴の口は開いたままなのだ。

今回の騒ぎを機会に、色々調べたり考えたことを、簡単に整理してみた。あくまで現段階での素人意見であり、間違いもあるかもしれない。通信にまつわる制度やデバイスは頻繁に変更される。何ら結果を保証するものでない点はご理解いただきたい。

まずはiPadの設定の問題だ。オランダに到着して最初にiPadを開いた時、「データローミングをオンにしろ」というようなメッセージが出た。通常日本で使っている状態のまま海外にもって行ったにもかかわらず、親切にも「海外でも使えるようにしてあげますよ」というメッセージが出るわけだ。海外に関して特別な設定や契約をしていなくても、同様の設定になっている場合が多いようだ。

料金さえ考えなければ、非常に便利な仕組みだが、その結果が46万円の請求書となってしまうのでは便利とは言えない。たまたまデータローミングが最初からオンになっていれば、メッセージすら出ずに請求書が送られてくる。データローミングは国内では不要な機能なので、普段は必ず切っておきたい。国内では「設定」の「モバイルデータ通信」にある「データローミング」を必ず「オフ」にしておこう。

自分の意志で、「データローミング」をオンにする場合も、注意が必要だ。通常国内で使っているときは、「設定」の「キャリア」は「自動」になっている。「データローミング」をオンにした途端、iPadは勝手にキャリアを選んで接続しようとする。問題はこの「自動」をオフにすることが出来ない(ように見える)ことだ。

「設定」の「キャリア」から定額対象事業者を選べば、そのキャリアに固定され、「自動」の横のチェックマークが消える。どこかのキャリアを選択しないと、自動を取り消せないのだ。定額対象事業者が表示されていない場合は、自分で選ぶかiPadが選ぶかは別にして、定額でないキャリアを選ぶことしか出来ない。これを防ぐには「データローミング」をオフに戻すしかない。日本出国前に、「設定」の「キャリア」から「SoftBank」でも選択して、「自動」の横のチェックが消えるのを確認しておくのも予防法になるかもしれない。

高額請求を避ける手段として、ソフトバンクには「一定額メール通知サービス」がある。しかし僕の場合を考えると、連絡があって使用を止めた後で、追加で23万円請求された。「一定額」を自分で決めることもできない。ソフトバンクは23万円程度は高額と考えていないのかもしれないが、多くの人にとっては、このサービスでは身を守れない場合があるという例だ。

国内のキャリアによっては、高額になった時に自動的にサービスを止めてくれるところもあるらしい。しかし、ビジネス上の理由で金額が分かった上で使っていても止められてしまい、問題が起こる例もあるようで、一概にどちらが良いとは言えないようだ。多分問題は、これらのサービスがキャリアの押し付けになっていることだろう。警告を出す金額の設定や、自分が決めた金額に達した時にどうするかを、利用者が選べるようにしてほしいものだ。それはデータローミングの時も同じで、キャリアが切り替わる際に料金が変わるなら、確認メッセージを出すぐらいのことはして欲しいところだ。

海外で安価にネットワークを利用できる他の手段を選ぶという選択肢もある。ポータブルのWi-Fi端末を買ったりレンタルするとか、現地でプリペイドのSIMを買うとか、サイズの合わないSIMを自分で切って合わせるとか、現地のWi-Fiサービスを契約するなど。ただ、頻繁に海外に出かける人や、技術に自信がある人には良いだろうが、普通の旅行者にはかなり敷居が高い方法だと思う。

僕がオランダとベルギー間を移動した時に使った高速鉄道タリスでは、途中座席で軽食や飲み物のサービスもあったが、タリスバーというビュッフェ車両(写真)も連結されている。立ち席で、中では軽食、スナックやビールなどを売っている。

bar.jpg

タリス内でThalysNetというWI-FIサービスが利用できるらしく、タリスバーにポスターが貼られていた。高速接続には心引かれたし、どんな環境が提供されているか試してみたかったが、「パケット定額で充分だ」と考え、時間とお金の浪費を戒めた。もし今回最終的に何らかの追加料金を支払う羽目になっていたら、「何であの時ThalysNetを使わなかったんだ」と大いに悔やまれたに違いない。

タリスバーにはThalysNetのパンフレット(写真)が置かれていて、プリペイドカードも販売していた。利用料金は1時間6.5ユーロもしくは1乗車13ユーロ。決して安くは無いが、この日に請求された23万円の100分の1以下だ。しかも1等車ならThalysNetの利用は無料だ。

thalysnet.jpg

こういうサービスの利用も、多くの人にとっては敷居が高いのが現実だろう。iPad(パソコン)側の設定、指定されたアドレスへのアクセス、アカウントの設定、プリペイドバウチャーの購入、の全てが成功しないと接続されないからだ。

しかしWi-Fi端末など、持参する機器を増やす場合は、別の煩雑さが生まれる。移動中はそれぞれの機器のバッテリー残量を管理しなければならなくなるからだ。電源があっても電圧やプラグ形状が日本と違うので、電子機器が多いと電源の確保だけで一苦労だ。携帯のアダプターを忘れた人もいて、途中でバッテリーが切れてしまった。携帯のアダプターやコンセント分配タップなど、日本ならどこでも手に入るものが、旅先では海外規格となり入手困難になる。

今回、携帯電話でも考えることがあった。僕の電話は古い機種なので、成田で海外ローミング対応機種を借りた。携帯メールは使わないので、英語フォントしか搭載していない端末にした。日本からの電話も着信するが、誰からかかって来たか分からない。しかし別のキャリアの携帯電話では、誰からかかって来たかも分かる。ついでにメールでも発信者情報を送ってくるところを見ると、着信時には表示出来ない端末もあるのだろう。

このように、キャリアや機種によって、ローミングサービスの内容がかなり違う。海外対応はまだ過渡期ということだろうが、携帯電話を選ぶ際には、こうした面も考えた方がいいかもしれない。

本来はiPadのように、自動的にキャリアが切り替わってくれるのが、旅行者に優しい製品と言える。問題は気付かないうちに料金が高額になることで、定額対象事業者だけに自動的に接続するようにしてくれれば問題は解決する。それ以外のキャリアへの接続は、禁止するか、料金プランを提示した上で許可を求めるかを選べるようにしてくれれば、多くの旅行者が安心してこのサービスを利用できるようになると思うのだが。

続く

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プロフィール

川崎重工業人事部・川重米国本社CFOを経てガリレオに参加。ガリレオの業務の傍ら、環境問題、食糧問題に関心を持ち、「電脳自然生活」を目指して有機農業で米、野菜を作る。

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