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合原亮一の「電脳自然生活」

環境問題から生き方まで、地球ととことん付き合う方法論を模索する。

4.具体的な工程

2011年5月31日

3.本提案のメリットとデメリットへ戻る

4.具体的な工程

1)取水路開渠入口などを塞ぎプールを作る

 1-4号機取水路開渠入口を塞ぐ。方法はいくつか考えられるが、一番早いのは重力式ダムでせき止めてしまうことだ。護岸ブロックや消波ブロックのようなものを積み重ね、間に砂利や粘土を詰めてコンクリートで覆う。鋼矢板などで塞ぐことも考えられるが、工期が早い方を選択するべきであろう。他にもう1カ所プールを用意する。

2)プールの海水を排水する

 プール内部は海水なので、排水することが望ましい。1-4号機取水路開渠内の海水は既に汚染されているので、もう1つのプールをまず排水する。水密に問題があればコンクリートや水ガラスなどで水密とする。ここに1-4号機取水路開渠内の汚染された海水を移す。これで湾外の海への放射能の放出が止められる。1-4号機取水路開渠内も水密に問題があれば水密とする。

3)各建屋とプールを配管でつなぐ

 各建屋とプールの間をそれぞれ3本の配管でつなぐ。炉心の蒸気をプールに導く配管と、炉心の水をプールに導く配管、そしてプールの水を炉心に注入するための配管の3つの配管だ。万一の漏洩の可能性を減らすために、二重管とすることが望ましい。ポンプ等を必要に応じて設置する。また使用済み燃料プールからも排水のための配管と注水のための配管が必要になる。ほとんどの作業は比較的線量の低い屋外で行うことができる。

 圧力容器との配管と、使用済み燃料プールとの配管には、高線量下での作業が必要になるかもしれない。洗浄などで線量を下げてからの作業が望ましい。炉心の冷却を優先し、炉心状態が安定してから使用済み燃料プールに取りかかる、というやり方も検討に値するだろう。

 なお、建屋から汚染水プールへの配管は、タービン建屋の主復水器経由とすることも検討に値する。また、冷却水配管の破断事故に備えて、各冷却対象ごとに、中間冷却水タンクを設置したり、電源の多重化を図ることが望ましい。冷却を開始し、放射能放出を抑制することが優先であるので、これらの対策は循環冷却実現後とすることもできる。

4)プール内の汚染水を処理するための配管を準備する

 プール内の汚染水は何らかの除染を行うことが望ましい。そのための汚染水移動に必要な配管を準備しておく。

5)プールに蓋をする

 熱伝導率の高い素材で蓋をする。浮力で水面に浮く構造とし、熱伝導率を高める方法も検討の余地があるが、台風等で破壊される可能性がある。剛構造の屋根を掛け、アルミ合金等の熱伝導率の高い素材でプール中の熱を大気へ伝達できる構造とする方が望ましいと思われる。

 基本的にはプール内は冷却により負圧となるはずであるが、炉心の状態変化による圧力変動を吸収する必要があり、また水蒸気と共に排出される可能性がある、気体排出物の処理にも対応する必要がある。プールは気密構造とし、気層の圧力が高まった場合は、除染処理をして大気中に放出することになる。既存の処理系に接続出来ない場合は、除染排気塔の新設を行う。

6)建屋内の汚染水を必要に応じてプールに移す

 建屋内の放射能に汚染された排水が増え続けることが考えられる。この汚染水は、主復水器の海水側に排水すれば、プールの中に排出される。建屋内だけを通すことができるので、外部に放射能が漏れる心配は少ない。ただし汚染水の存在が格納容器からの流出や地下水の流入を抑制している可能性もあるので、移送量については慎重な検討が必要になる。

7)プールの水にホウ酸を加える

 中性子を吸収するためのホウ酸を必要に応じてプールの水に加える。建屋内の汚染水の移送量が少なかった場合は、必要な量の淡水をプールに加える。


 以上の方法で、汚染水を使って炉心を冷却し、発生した水蒸気も漏れ出した汚染水もプールに戻せば、これ以上汚染水が増える心配も、汚染された水蒸気を放出する必要も無くなる。循環水量を徐々に増加させることで、発生水蒸気量を減らして行くことができれば、安定的な循環冷却が実現する。本提案の背景にある考え方、他の方策の問題点などについては別紙にまとめた。


以  上

別紙 提案の背景と補足

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プロフィール

川崎重工業人事部・川重米国本社CFOを経てガリレオに参加。ガリレオの業務の傍ら、環境問題、食糧問題に関心を持ち、「電脳自然生活」を目指して有機農業で米、野菜を作る。

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