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ガリレオの「Wired翻訳裏話」

Wiredの記事選択作業や翻訳作業中に発見したこと、記事に掲載できなかったことなどをいろいろと。

日本が誇る弁当文化

2009年2月 7日


AnnaTheRedさんが一番気に入っているという作品のひとつ。「色と栄養のバランスがいいから」/写真と文章は英文インタビュー記事より


昨日掲載したキャラ弁記事についててですが。

もともと、米国の子供たちが持たされるランチと比べると、日本の弁当は非常に凝っています。ランチボックスやランチバッグ(ただの紙袋)に入っているのはだいたい単純なピーナツバタージェリーサンドイッチやチーズサンドイッチくらいであり、それらと比べると、日本の弁当のバラエティ、カラフルさは「別世界」に見えます。その方向を極めたキャラ弁など、米国人から見たらまさに信じられない作品の数々でしょう。

wikipediaでも、「日本では古くから弁当の習慣が起こり、他の諸国では例を見ないほどの発展を遂げていった」と説明されていますが、たしかに日本の弁当というのは、日本人独特の食生活へのこだわりや繊細な美意識が感じられる伝統だと思います。

英語版Wikipediaでも、市販の弁当も増えてきているが、日本の家庭ではいまだに「魅力的な弁当を作成するためにかなりの時間とエネルギーを費やす」ことが普通だと説明されています。最近は食生活の伝統が崩れて来ている傾向はありますが、キャラ弁のコンテスト・サイトなどを見ると、その世界では日本の伝統はいまも形を変えて続いているようです。(だいたい、先ほど書いたように、ごく普通の日本の弁当でも、米国の「パンにチーズをはさんでジップロックに入れるだけ」というランチよりは「時間とエネルギーが費やされて」いますし)

米国サイトがインタビューを行なったキャラ弁作家AnnaTheRedさんの発言も、日本人的だなーと思わせるものでした。「日本には優れたキャラ弁を作っている人たちがたくさんいて、私の弁当なんて、日本の人たちの熱心さや細部へのこだわり、そして彼女たちが毎日作っていることと比べると、なんでもないんです」と語り、「私は怠け者なのでFlickrにアップロードしていませんでしたが、ボーイフレンドがアップロードし始めました」と語る雰囲気の謙虚さ、自己主張を抑える感じですね。

それにしても、AnnaTheRedさんは「ボーイフレンドの驚く顔が見たくて作っている」そうで、彼氏はまったくうらやましい男性です。作成は、「完成するまで絶対秘密」体制で、ときには冷蔵庫の中も見せないそうです。

ところで松花堂弁当は、1992年にIBM社が開発した『Thinkpad』のデザインに影響を与えたとされています。EDNの記事はこう書いています。「[IBMのデザイン顧問]リヒャルト・ザッパーは、デザインはクリーンで、簡素でエレガントであるべきだと感じていた……木製の試作品は松花堂弁当に基づいていた。松花堂弁当とは、黒い漆塗りの伝統的な日本のランチボックスだ」。(なお、このデザインは、IBM大和事業所にいた山崎和彦氏とのコラボとされています。)

680px-ThinkPad760LD_IBM_e.jpg
ThinkPad760LD 弁当箱の由来と言われる構造。HDDやFDDはカートリッジ方式を採用して簡単に取り外せる仕様になっている。説明と写真はWikipediaより

そして、たぶんThinkpadのエピソードが影響を与えたのではと思いますが、米FileMaker社が出している(日本語版記事)Mac用のデータベースソフトが『Bento』という名前ですね。アイコンが松花堂弁当だそうで。


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Wiredの翻訳を担当しているガリレオ。日本国内や世界の様々なところに住む翻訳者や開発者が、ネットワーク上で協業している。Twitterはこちら

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