トランスフォーマーという情熱:玩具とテレビが合体した「グローバルな大儲け」
2008年10月20日
画像は日本語版記事より
本日翻訳を掲載した「中国人青年が廃車で作る、巨大『トランスフォーマー』」は、世界の子供たちにトランスフォーマーが与えた影響が改めてわかる記事でした。製作者の話自体も興味深いものですが、その作品の細かなところまで米国人筆者が理解しているのを見ると、中国と米国、場所は違っても同じ文化を共有していることがよくわかります。
『トランスフォーマー』シリーズは、もともと日本国内でタカラ(現タカラトミー)から販売されていた『ミクロマン』および『ダイアクロン』シリーズに関して、米国のハスブロ社が業務提携し、他社の変形ロボット玩具と共に『TRANSFORMERS』として1985年に販売したものが大ヒット、日本にも逆輸入されたものだそうです。
2007年に映画が公開され、世界中でメガヒットになりましたが、ワイアード誌では当時、特集を組み、Wired.comでも、読者に自分の大事なトランスフォーマーの写真を投稿するよう呼びかけたりしています。
この投稿をよびかける記事(日本語版記事)では、「ワイアード・ニュースのスタッフの中には、その人生を通じて、変身型ロボット『トランスフォーマー』が実際に出現することを待ち望んできた人たちがいる……読者の多くが、同様の生涯の夢を抱いていることは知っている。その情熱を記録した写真を見せていただきたい」とあります。
ワイアード記者および読者層の多くが、子供のころトランスフォーマーで遊んだ層、であるようです。1985年に5歳ころから10代前半というと、現在20代後半から30代前半でしょうか。
前述ワイアード特集の中の記事によると、トランスフォーマーは1985年だけで3億3300万ドル(ハスブロ社の全売上の4分の1以上)を販売。8年間での売上げは10億ドルという大成功を納めました。この売上げを支えたのがテレビ放送。実は米国では、玩具業界は自社製品が登場するテレビ番組を制作しない、というFCCおよびテレビ業界のガイドラインがあったのですが、1983年にそれが変更された「成果」だそうです。背景に複雑なストーリーを設定し、たくさんのキャラを登場させて、それぞれを売るという戦略があたったわけです。
トランスフォーマーは、中国でも『変形金剛』という名前で大成功を納めました。China.orgの記事は、中国でもメガヒットになった映画ポスターの写真も含め、中国のトランスフォーマー文化について紹介していますが、これによると、中国で放送が開始されたのは1987年。「中国の人々が初めて西側諸国の文化に触れた新鮮さ」もあり、「初めて見たのは7歳のときだったが、番組の最初の音楽だけでも夢中になった」「3カ月お金をためて、泣きわめいて両親にトランスフォーマーの玩具を買ってもらった」「町の通りで子供達が『オートボット、トランスフォーム、ロールアウト!』と叫んでいたものだった」という人気ぶり。過去20年間に中国で売れたトランスフォーマー関連の売上げは50億元(6億6100万ドル)だそうです。
トランスフォーマーは、「乗り物、アクションフィギュア、パズル」と男の子が好きそうな要素が合体した玩具として「子供の遊びを変えた」(前述ワイアード記事の表現)のですが、同時に、玩具業界とテレビ業界が合体して、グローバルな大儲けが可能になった例でもあるようです。
もちろん、世界中の子供の心をつかめたのは、この作品世界に、人々の無意識に訴えかける強い力があったということでもあるでしょう。それはひとつには、過去記事「シアトル『SF博物館』で日本のロボ玩具展覧会:画像ギャラリー」で紹介しているような、日本独特のロボット玩具の伝統にも支えられているのでしょうが、米国独特のストーリー展開のうまさもあると思います。
たとえば、ワイアード特集の映画レビューでは、トランスフォーマーのキャラクターは子供たちにとって自由や闘いの象徴になり、「メカ・ダディ」つまり、本物の父性が失われて行った時代の「代理の父親」となった、としています。2001年には、30歳のオハイオ州に住む男性が名前を公的にOptimus Prime(日本名はコンボイ)に変えた例すらあるそうです。「子供のころはOptimus Primeに本当に依存していた……実の父親はもう亡くなっていたので、周りには、[精神的に頼れるものは]誰もいなかった」、と彼は、(州兵として中東に派遣される前に)語っているそうです。
最後に、Optimus Primeが見事に踊る動画をご紹介。これは、YouTubeで大人気を集めたEvolution of DanceのOptimus Primeバージョンです。
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