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ガリレオの「Wired翻訳裏話」

Wiredの記事選択作業や翻訳作業中に発見したこと、記事に掲載できなかったことなどをいろいろと。

9/11と「新世界秩序」:「いまのMTVでは決して放映されない作品」

2008年9月14日

米国ワイアードサイトで、9/11同時多発テロ関係の記事がいくつかありましたのでご紹介します。

ワイアードサイトには、いくつかのブログがあるのですが、まず、Scienceブログでは、ツインタワーの残骸からの有毒物質を吸った救助隊員などがいまどうなっているかという科学記事がありました。これについては翻訳して16日に掲載する予定です。

軍事技術ブログ『Danger Room』では「ありし日のツインタワー」の写真が大きく出ていました(本文はなく、タイトルと画像だけです)。

タイトルDon't You F'ing Forgetは、「絶対に忘れるな」「まさか忘れてはいないだろうな」という感じでしょうか。F'ingはいわゆる4レターワードではないかと思いますが、いずれにしろかなり強い感じの語調だと思います。

これに対しては、いろいろな立場からの読者コメントが付いていました。まず、Xananaという人物から、「忘れるな、とは、どこの部分を忘れるな、というのか?公式に正しいとされている、あの馬鹿らしい話か?あるいは、主流派メディアでは公的にはいまだにオフリミットな、真実の真剣な追究か?」というコメントがつき、それに対して、「黙れXanana。Noah(記事の筆者)、ありがとう」というコメントがついたところから始まり、70近いやりとりが行なわれています(注1)。

全部は読んでいないのですが、Xananaに対しては、「お前はネットにいるから安全なだけだ。現実世界にいたら俺が黙らせてやる……お前が本当に違いを生み出したいのなら、橋から飛び降りろ」という激しい意見も付いています。

一方、音楽ブログ『Listening Post』では、9/11関連の音楽ビデオが紹介されていました。

現在のブッシュ大統領の父親である「パパ・ブッシュ」は、第一次湾岸戦争時(1990年)の9月11日に、この紛争は「新世界秩序」へのひとつのステップだという演説をしたのだそうです。(全文はこちら。新世界秩序とは、「われわれがいまだかつて知らない世界、ジャングルの支配ではなく法が支配する世界、自由と正義の責任を諸国が認識し共有する世界」だそうです)

その演説の一部を使って米国のインダストリアル・メタル・グループ『Ministry』が1992年に発表した曲『NWO(New World Order)』が以下。Wikipediaの解説によると、このビデオには、自由の女神の格好をした女性が警官から殴打されるシーンがあるのですが、そのシーンは、1991年のロス暴動の元になったロドニー・キング事件を撮影した有名なアマチュア・ビデオのシーンを模しているそうです。

この曲はビルボードチャート11位になり、Ministryにとって最高のヒット作品となったそうですが、記事の筆者は、「この作品は現在のMTVでは決して放映されないだろう、MTV2でさえ無理だろう」と書いています。それは、2001年に起こった同時多発テロの犠牲者たちへの思いが米国で、一種の聖域、異論や批判を許さない禁忌を生んだことを意味しているのでしょう。振り返るとたしかに、2001年のテロはある意味で、「いままでとはまったく違う、新しい世界秩序」を生み出したのだということを思います。

9/11関連の過去記事で印象的だったのは、画像ギャラリーの以下の写真です。

イラクのアブグレイブ刑務所で収容者が増えたために増築された施設『キャンプ・リメンブランス』の隔離独房。キャンプ・リメンブランスとは「追悼施設」という意味で、2001年9月11日に殉職した警察官たちを記念している(PDF)そうです。気温は摂氏50度に届きそうな暑さと書かれています。


注1
たまたまこの記者Noah Shachtman氏は、この記事の直前に、リスをパチンコ台で空に打ち上げるという動画を「われわれが待っていた奇跡の武器がやっと現れた」というコメント付きで掲載しており、読者の多くから激しい批判を受けていました。「この虐待については絶対にF'ing Forgetしないぞ」というコメントもあります。

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Wiredの翻訳を担当しているガリレオ。日本国内や世界の様々なところに住む翻訳者や開発者が、ネットワーク上で協業している。Twitterはこちら

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