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ガリレオの「Wired翻訳裏話」

Wiredの記事選択作業や翻訳作業中に発見したこと、記事に掲載できなかったことなどをいろいろと。

日本語を勉強すれば秋葉原のポスターが読める!

2008年7月13日

米国ワイアードにはいくつかのブログがあるのですが、その中にGame/Lifeというゲーム関連のブログがあります。

このブログには複数の記者が記事を掲載していますが、その中のJean Snowさんという人は東京近辺に住んでいるようで、ときどき秋葉原に行っては、写真レポートを掲載しています。(そのうちの1本を、『警官が増えた秋葉原を探訪:Wired記者の写真レポート』という翻訳記事で紹介しました。)

上記記事の中でも紹介しましたが、秋葉原レポートについている読者コメントは、なかなかキュートなものが多いです。7月8日付けの最新レポートSurrounded By Akihabara's Wall-to-Wall Marketingから、コメントの一部をご紹介しましょう。(以下の写真についてのコメントです)

「"It's a wonderful life" に書いてあるヒラガナはどういうふうに読むの? 僕も読めるべきなんだけど、すごく歪んで書かれていてよくわからない……すばるきこのせから?ちょっとは近い?」Posted by: Joe | Jul 8, 2008 10:17:26 PM

「すばらしきこのせかい、みたいだよ。んーと、すばらしき この せかい。wonderful this world、かな? すばらしきの最後にある"き"は何? 僕が誤読してるのかな?」Posted by: David Carlton | Jul 8, 2008 10:53:20 PM

「"き"は古い日本語で形容詞の活用形。すばらしき、は、すばらしい、と同じ意味なんだけど、"き"はもっと格式ばっているんだ」Posted by: kaokun | Jul 9, 2008 1:22:09 AM

「そうか……日本語を勉強したらこういった写真にある字を読めるようになるのかな?日本語は中国語みたいにいろいろな形式があるの?」Posted by: Cmdr. Mark | Jul 9, 2008 5:35:06 AM

たしかにこのロゴは読みにくい。ヒラガナ表を持って、顔をしかめて読んでいるJoeくんたちの顔が思い浮かびます。まるでターヘル・アナトミアに向かう江戸末期の蘭学者たちのように、彼らには「学びたい思い」がわき上がっている模様です——「秋葉原」のゲームタイトルを読みたいがために。(最後のコメントはよくわかりませんが、中国語に、標準語以外のいろいろな種類があることを指しているのでしょうか。)

ところで、「日本のhentaiゲームをやってみたいけれど、日本語を読めないので我慢している人たちに朗報だ」で始まる記事がありました。(なお、hentaiとは、かなりネガティブな語感である日本語の「変態」とは違って、けっこう中立的に「性的な内容の日本アニメやゲーム」を指す言葉である模様です。)

世間知らずな私は、翻訳原稿のチェックのために初めてこのhentaiゲームなるもののサイトのひとつに行ってみたのですが、これはカルチャーショックでした。というのは、基本は少女マンガというか、透明でロマンチックな世界なのですね。どこにエロがあるかは、サイトをよーく探さないとわからないのですね。(記事で紹介した英語版ダウンロードサイトMangaGamerは、本格開始した今はいわゆるエロ風なゲームもかなり増えている模様ですが、記事を翻訳したときは本格開始前で、某C社の2本の紹介しかなかったのです)


画像は紹介した記事より

hentaiゲームの世界とはおそらく非常に広大なものであり、私はそのごく一部を覗いただけなのでしょうが、とりあえずそのサイトは、hentaiという言葉についての英語版wikipediaの説明「実写映像では表現できないような方法で、性的ファンタジー要素を表現するもの」(Hentai anime and manga allow elements of sexual fantasy to be represented in ways that would be impossible to film.)を、妙に納得させるものでした。

たしかに、ロマンチックで美しいあの世界は、実写では表せません。というか、現実には全くあり得ないものでしょう。ああいう世界が、「二次元」というものなのですねおそらく。

そして、あの世界は日本でも西洋でもない。日本から見れば(異様に大きい目などが)西洋的なのでしょうが、西洋から見ると、日本アニメの世界としか言いようのない、独特の世界でしょう。

hentaiゲームに限らず、さまざまなジャンルの日本のアニメやゲームは、まるでファンタージエン国のような、この現実とは全く違った世界を創り出してきたのだろうと思います。抜け出せない虚無や妄想などになりうる危険もあるが、現実世界の「対」として人間が求めざるを得ない国——現実での国の違いを超えて若者たちを惹き付ける魅力は、そんなところにあるのかもしれません。

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プロフィール

Wiredの翻訳を担当しているガリレオ。日本国内や世界の様々なところに住む翻訳者や開発者が、ネットワーク上で協業している。Twitterはこちら

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