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yomoyomoの「情報共有の未来」

内外の最新動向をチェックしながら、情報共有によるコンテンツの未来を探る。

敢えてブログは重要だと言いたい

2009年8月11日

(これまでの yomoyomoの「情報共有の未来」はこちら

先月の話になりますが、11D というブログの The Blogosphere 2.0 というエントリが海外で話題になりました。これはまさにブロゴスフィア(ブログ界隈)の変化と最近の特徴を挙げたものです。himaginaryの日記に訳があるので日本語で読みたい方はそちらをどうぞ。

  1. アルファブロガーはもはや影響力を持たなくなった
  2. ニッチなブログが人気
  3. 規範と慣例の変化
  4. ブロガーの燃え尽き症候群
  5. 読者の燃え尽き症候群
  6. 大手メディアも飽きた
  7. Huffington Post
  8. TwitterとFacebook
  9. リンク監視機能の低下

この9つの傾向について日本のブロゴスフィアに当てはまるものもあればそうでないものもありますが、今はそうでなくてもいずれそうなるというのが分かる気がします。

個人的に面白く思ったのは Huffington Post についてのくだりで、当ブログでも以前取り上げた Huffington Post に代表されるブログ(ネットワーク)のメインストリームメディア化の流れは続いているようです。また Huffington Post の記事が「他のブログにリンクしないなど従来のブロゴスフィアを形造ってきた規範に従っていない」というのも、レベッカ・ブラッドが『ウェブログ・ハンドブック』で Blogger ユーザに対してまったく同じ指摘を行っていたのを思い出し、そうやって歴史は繰り返すのかと古参としては微笑ましく感じました。

The Blogosphere 2.0 の文章の基調となっているのはブロゴスフィアの飽和と倦怠で、成熟期に入ったブログはもはや先端的なメディアではなくなったという認識です。その対としてこの記事では Twitter と Facebook が挙げられていることから分かる通り、エッジはソーシャルメディアに移ったということでしょう。

Facebook はともかく、Twitter に関してはこれは日本にも当てはまる話でしょう。というか、最近は Twitter の話題ばっかりなんですよね!

Twitter が今最も勢いのあるサービスというのはその通りで、ワタシ自身楽しく使っており、それに関連して津田大介に新書執筆を勧めたりTwitterを使った原稿催促Botを夢想したりしているわけですが、それと同時にブログが古いものとして扱われるのはまだしも、もうすべてリアルタイムなメディアに移っていくといった論調まで見ると、天邪鬼なワタシとしては敢えてブログの重要性を言い立てたくなります。

例えば上で名前を挙げた津田大介氏は日本を代表する Twitter ユーザの一人であり、Twitter を最大限活用している個人的に尊敬するネットワーカーですが、Twitter の文字数制限や前後の発言の文脈が読み落とされてしまうサービス上不可避な制約とリアルタイム性が災いして無用の反発を買っているのをたまさか見ると、同情はこれっぽっちもしませんが、重要な話は後ででもいいからブログにまとめなおせばいいのに、と思ったりします。

さて、ここから話は変わりますが、少し前にスコット・ローゼンバーグ『プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間』を読み、ストーリーを語るのに欠かせざるピースとしてコンピュータ世界の偉人たちの仕事紹介を巧みにやっていて感心したので著者について調べてみたら、ちょうど新刊『Say Everything: How Blogging Began, What It's Becoming, and Why It Matters』が先月刊行されていました。

早速書籍の公式サイトを見てみたところ、この本はブログの歴史を過去から現在まで辿り、その上でブログの重要性を説く本のようです。

公式サイトの FAQ ページに「ブログなんて時代遅れじゃん。今重要なのはソーシャルネットワーク、Facebook と Twitter だよ!」という質問があってニヤリとしたのですが、それに対するスコット・ローゼンバーグの回答は以下の通りです。

Facebook ユーザで起こったことはほとんど全部、Facebook ができる前にブロガーに起こったことなんだ。

ブログはウェブ上で自己表現を共有する最初のツールだった。多くの人たちがより新しいサービスやテクノロジーに移りつつあるが、何百万もの人々が今でもブログを書いてるし、個人の自主性と集団力学がこんなに完璧にバランスを保つオンライン交流のスタイルは他にない。

ほとんどの人にとって、今日のソーシャルウェブは歓喜の園と地雷原の間を行ったり来たりしてる感じである。この風景を横切って進もうとする人なら、初期のブロガーの体験――過剰共有の帰結、オンライン生活の各領域を分けることの難しさ、匿名性の誘惑的魅力、つかみ所のない権威の新しいあり方、そして信頼性の追求と名声欲の衝突――に耳を傾けるとためになるよ。

古参ブロガーでもある著者の意地を感じる一方で、地殻変動を認め、ブログ最高と強弁できない弱気も感じますが(笑)、著者が歴史物語の書き手として実力があることは『プログラマーのジレンマ』で証明済みですので期待したいところです。

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プロフィール

1973年生まれ。 ウェブサイトにおいて雑文書き、翻訳者として活動中。その鋭い視点での良質な論評に定評がある。訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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