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yomoyomoの「情報共有の未来」

内外の最新動向をチェックしながら、情報共有によるコンテンツの未来を探る。

極私的はてなダイアリーアンソロジー2008(後編)

2008年12月25日

(これまでの yomoyomoの「情報共有の未来」はこちら

前回からの続きで、ワタシが独断と偏見で2008年にはてなダイアリーのエントリから20本選ぶ「極私的はてなダイアリーアンソロジー2008」の後編です。

もう専業ライターという職業は成り立たなくなる、もしくは「石田衣良化」について(【B面】犬にかぶらせろ!)

2009年のキーパーソン速水健朗さんは「石田衣良化」なる道を書いているが、あるときワタシが気付いた、ライターとして食っていく最も有力で身も蓋もないな策を披露させてもらう。

それは「自分で稼げる、しっかりものの配偶者を得る」ことである。なんだそれと言われそうだが、実はワタシがこれを悟ったのは、速水さんと奥様のお二人とお目にかかる機会があったときだったりする。一見のほほんとしながらも一筋縄にいかない底知れなさのある速水さんと、対照的に直裁でしっかり者な夫人の組み合わせの妙に感心したものである。

友達の詩(歌餓鬼抄)

「アダルトビデオ調教日記」というものすごいブログ名だった頃から一貫して読ませる文章を書かれる方である。こうしたブログを読むのでなければおそらく一生観ることがない作品について、書き手の感情移入に寄り添いながら感じることができるのもブログの醍醐味かと思う。

京都から三重に帰る(コトリコ)

今年の3月、このブログの作者に「どうしてアナタはキ×××みたいに面白い文章が書けるんですか!」と失礼にも絡んだことがあり、そうした意味では「日本語がどうのこうの雑感」のようなキ×××ズムを感じる文章を選ぶべきなのだろうが、今年の夏に書かれたこれに始まる一連の文章は、同じ30男であるワタシにとって何とも言えない読後感があったので。

毎日新聞問題は「セクハラ問題」であるとの認識(Tech Mom from Silicon Valley)

毎日デイリーニューズWaiWai問題に関する海部美知さんのこの見解に完全に同意する訳ではないのだが、それでもここに書かれる視点が欠けていたということは、そうそう毎日新聞ばかりを叩けないなとはっとした記憶がある。なおワタシ自身は、毎日新聞は潰れるなり何なり勝手にすれば? という立場である。

やりたかったことの五分の一くらい(空中キャンプ)

「大それたブログ名を付けるものだな」というのがこのブログの第一印象だったが、すぐにその文章の魅力の虜になった。どうしてこんなに素直で、でもただ従順じゃなくて、浮揚力のある文章が書けるのだろう。岸本佐知子さんにも少し似た、でも「空中キャンプ」独自としかいいようのない文章が妬ましい。しかし、読んでいる最中は、それすら忘れる。

自分の人生は自分で決める。(未来のいつか/hyoshiokの日記)

若者が熱いのは不思議じゃない。もちろん若者がすべからく熱くあるべきであるということではないが。一方で熱い中年というのもよいだろう。個人的な好みで言えば、熱いおばさんより熱いおっさんのほうが好きだ。吉岡弘隆さんを指して「熱いおっさん」呼ばわりは紛れもなく無礼なのだが、それを承知でそう書いてみたかった。

2008年10月18日の日記(ENDING ENDLESS 雑記帖)

これは一日分読んでいただかないと意味がないので変則的な紹介になる。円堂都司昭さんの読みが冴えまくっていて、ゼロアカとかどーでもいいワタシも盛り上がって読める。

批評家と書評家の対比の話は読んでてはっとしたし、最後に提示される「東浩紀=明石家さんま」説がケッサクだし、示唆的でもある。

幸せを表明することの政治的正しさと、他人をもっと幸せにすることの気前よさ(理系兼業主婦日記)

この文章が突く「さもしい、ケチ臭い精神」は、今の日本を広く覆う不幸を言い当てている。そして、間違いなく自分の中にもそれがあるのを認めなくてはならない。

「だから、私は今日から、おそれずに笑おう。幸せだと言おう。同じように笑っている人が、もっと笑えるように、手を貸そう。」という決意は尊い。こういう文章にこそ勇気を感じる。

オバマでは正直困ってしまう件(深町秋生のベテラン日記)

深町秋生さんの文章はどれをとっても面白いし、実際「深町秋生の新人日記」改め「深町秋生のベテラン日記」は、いずれベスト選が書籍化されるのではないか。ワタシはさほど作家の方のブログを読んでないのだが、ブログでその存在を知り、それがあまりにも面白いから小説も買ったのは深町秋生さんがはじめてである。

かつて深町さんに「人を傷つけることしか書けないなら作家やめたら?」という言葉を投げかけたバカがいた。人が傷つくことを率先して書くのが作家ではないのか? 深町さんはその力量も覚悟もある書き手だと思うので、氏にはこれからも言葉で人を傷つけてもらいたい。

あまりに危機感のない人たち(Chikirinの日記)

そして、2008年、世界経済はこんな有様になってしまった。はっきりいって他人事ではない。ワタシも来年には身の振り方を決めなくてはならない。

ほとんど明るい話のない2008年の年の瀬であるが、本 WIRED VISION ブログに関しては、後半ワタシの生活が忙しくなってから文章が荒れてしまった反省点はあるもののコンスタントに書けたという自負がある。お付き合いくださった読者の皆さんに感謝します。

それでは皆さん、良いお年を。昨年と同じ文章になりますが、読者の皆さんにとって2009年が良い年になることをお祈りします。そして皆さんも、悲しい生活を送るワタシの人生がもう少し明るいものになることを少しは祈ってくれませんか?

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プロフィール

1973年生まれ。 ウェブサイトにおいて雑文書き、翻訳者として活動中。その鋭い視点での良質な論評に定評がある。訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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