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yomoyomoの「情報共有の未来」

内外の最新動向をチェックしながら、情報共有によるコンテンツの未来を探る。

極私的はてなダイアリーアンソロジー2008(前編)

2008年12月17日

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今年のはじめ「ネットと出版をめぐるとりとめのない話」という文章を書いたとき、『はてなダイアリーアンソロジー』みたいな書籍はどうだろうか、と提案したことがあります。

あれから一年近く経ち、2008年も残すところ半月を切りました。残念ながらそうした書籍が実現する話を聞かないので、試しにワタシが勝手に2008年にはてなダイアリーで公開されたエントリから20本ばかり選んでみようと思った次第です。タイトルに「極私的」と付けている通り、狭い巡回範囲内からワタシが適当に選んだもので、そのリストに何らかの権威をもたせる意図がまったくないことは明記しておきます。

当方のチョイスに不満が出るのは当然であり、個人的にはそれを感じた人たちがそれぞれの「はてなダイアリーアンソロジー2008」を選ぶとよいなと思います。『はてなダイアラーが選ぶ! はてなダイアリーアワード2008』といった企画もありますので、そちらに参加されるのもよいでしょう。

基本的にワタシが好きで読んでいるはてなダイアリーを中心にチョイスするもので、少なくともワタシが嫌いなブログからは一つも選ばれてません。あと付け加えるなら専門的な内容のエントリ、狭い範囲でしか通用しない用語が多用されるエントリは避け、あと長短や内容などバラエティを持たせ、コアなはてなユーザでなくても楽しめるものを選択基準にしています。

こういうのは文章を並べる順番にも選者のセンスが出るものですが、残念ながらそうしたのを考える余裕がないので、単純にエントリの公開順に並べさせてもらいます。

おいどんはただ生きてるだけよ(平民新聞)

いきなり平民民子さんの最高傑作の一つを紹介できて嬉しい。「『鉄のバイエル』未収録写真と、ひとつの宣言」のような平民さんの写真と文章の両方を味わえるエントリのほうが良いかとも思ったが、この文章を読んだとき、色川武大の『狂人日記』における「自分は誰かとつながりたい。自分は、それこそ、人間に対する優しい感情を失いたくない。」という文章を思い出し、涙が止まらなかったという思い出があるもので。

横綱の夜(はてなパイズリー)

続いてとんでもない文章であるが、このブログは「クリスティーナ・アギレナ」という名前の頃に知った。これが書かれたとき、そして現在とで名前が変わっている。ブログ名が変わっても、思い出したように書かれる文章の途方もなさは一貫している。ワタシのような凡才は、どうやったらこんなのを思いつくのだろうと呆然とするのみである。

「経営の未来」に従業員の未来を見る(アンカテ)

essa さんのブログは時折ヘンな方向に進むことがあり、いわゆるトンデモな領域に踏み込むことすら厭わず、小賢しい人間にバカにされるのを恐れない果敢さも氏の魅力だと思うが、これはフォーカスの定まった書評になっている。

要は、勇気がないんでしょ?(Attribute=51)

このエントリ自体のインパクトもさることながら、これを媒介とした議論や改変ネタを含めての成功と言うべきだろう。「要は、勇気がないんでしょ?」というタイトルを含め、確かに改変したくなるとっかかりの多い文章である。

Googleは「政府」になるつもりかもしれない(I 慣性という名の惰性 I)

アメリカにおける無線周波数帯オークションの話から、現在の主要な収益源である広告費の話まで読み解く今年書かれた Google 論の中で最良のものの一つ。

アニメやりに東大行ったおれが学歴について語ってみる(E.L.H. Electric Lover Hinagiku)

ここまで長文だとブログエントリの枠を超えているようにも思うが、ワタシが知らない分野の話を多く含むのに楽しくぐいぐい読まされた。それにしても「アニメやりに東大行った」なんて、東大どころか京大にすら入れなかったワタシはうなだれてしまう。

イカの町で出会ったモジャモジャ犬「わさお」(メレンゲが腐るほど恋したい)

動物枠(なんてあるのか)を考えると、しなもん会長のアブノーマルな寝姿にかなり惹かれたが、やはりはてなの内部関係者のブログを外すべきで、そうなると「わさお」以外にありえない。

参考:衝撃のモジャモジャ犬「わさお」をブレイクさせたフォトブロガー! メレ子さんインタビュー:MarkeZine(マーケジン)

お前のその言葉は、お前の欲望を裏切っていないか(Ohnoblog 2)

大野左紀子さんの文章は、彼女がはてなダイアリーに移ってくる前から好きで読ませてもらっていた。大野さんとワタシで共通する属性は少ない。個々の考え方を突き詰めれば絶対合わないところが多いはずである。しかし、ワタシはこの人の文章が好きだ。それこそがブログの素晴らしいところではないだろうか。

ピストルはなかなか当たらないし、威嚇射撃が安全なわけでもない(ARTIFACT@ハテナ系)

こういう企画を考えると、どうしても文章として完結したエントリを選びがちだが、ウェブ上のリソースを的確に参照、引用しながら主張を展開するものこそブログに適しているわけで、加野瀬未友さんのこのエントリは、秋葉原連続殺傷事件に関して、情報をしっかり押さえながら話を広げすぎない局地戦の好例だと思う。

要注意!インテリのモテない口説き方(ココロ社 ♪ほのぼの四次元ブログ♪)

今年はココロ社さんの活動の場が格段に広がった年で、素晴らしいことである。ただ「m9」に掲載された文章を立ち読みして痛感したのは、ココロ社さんの文章は写真や絵と一体化してこそ最大限の効果を発揮するという事実であった。

……みたいな書き方も「モテない口説き方」と根を同じくするものかもね(笑)

(次回に続く)

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プロフィール

1973年生まれ。 ウェブサイトにおいて雑文書き、翻訳者として活動中。その鋭い視点での良質な論評に定評がある。訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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