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山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

地球と我々の未来の行方を左右するかもしれない、環境系技術研究の現場を訪ねる。

マグロを産むサバが、次世代の漁業を作る(2)

2010年4月23日

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どうしてヤマメから100%のニジマスが生まれるのか?

ニジマスの精原細胞を正常なヤマメ稚魚に移植した場合、ニジマスの卵や精子に加え、元のヤマメの卵や精子も作られる。ヤマメとニジマスの雑種は致死性となるため、ふ化しない。

──宿主となるヤマメも精子や卵を作りますよね。ニジマスとヤマメの卵や精子がいっしょにできることになるのでしょうか?

2004年の段階ではヤマメの卵や精子も混じっていましたが、2007年にはニジマスの卵や精子だけを作らせることが可能になりました。

通常、有性生殖を行う生物は、両親から1セットずつ遺伝子を引き継いだ2倍体です。

ところが、ヤマメの受精卵を15分ほどぬるま湯につけると、遺伝子がもう1セット増えた3倍体になり、不妊になります。この不妊ヤマメに、ニジマスの精原細胞を移植すると、ニジマスの卵や精子しか作られなくなるのです。

──不妊のヤマメにも、精巣や卵巣はあるのですか?

不妊の原因は、生殖細胞がおかしくなるからで、卵巣や精巣になる薄皮は正常です。正常な薄皮にニジマスの精原細胞が入れば、3倍体のヤマメでもニジマスの細胞を養え、産卵も正常に行うことができました。

──すごい発見ですね!

ぬるま湯につけて不妊の魚を作る技術は以前からありましたし、3倍体で生殖細胞がおかしくなるという予想もなされていました。また、稚魚の薄皮が誘引物質を出すということも知られていました。僕らが独自に発見したのは、精原細胞も卵になりうるということです。

僕らは、これまで知られていた知識と独自の発見を組み合わせて、代理魚に別の種類の魚の卵や精子を作らせる技術を実現したわけです。

不妊ヤマメにニジマスの精原細胞を移植すると、ニジマスだけが生まれる。

ヤマメからニジマスだけの集団が生まれた。

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プロフィール

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。ネットカルチャー・IT・環境系解説記事などで活動中。『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、PHP新書)など。ブログは、こちら

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