次世代電池レースで脚光を浴び始めた「マグネシウム電池」(4)
2010年3月26日
大電流を取り出せる、もう一つのマグネシウム一次電池
──このマグネシウム空気電池は、携帯電話などの小型機器にしか使えないのですか?
栗原:電池では、化学反応の速度が電流の大きさになります。現在のマグネシウム空気電池では、マグネシウムのイオン化速度は速いので、反応する酸素の取り込み速度が律速(化学反応の速さを決定する主な要因)になっています。このため、大電流を取り出すには、電解液を保持しつつ、酸素の取り込み速度を向上させる構造が必要になります。このような構造で大型化するのは、そう簡単ではないと思われます。
そこで、もう一つ別方式のマグネシウム一次電池も開発しています。こちらの電池では、マグネシウムと水の反応を利用しています。触媒として使っているのは、「X」ではなく、マンガン系の化合物です。ただし、アルカリ電池に使われているマンガン化合物では、水の反応に対する触媒効果が低く、0.5V程度しか出ないため商品にはなりません。それに対し、「X」+αとマンガン系化合物を使うと、1.2〜1.4V程度の電圧を取り出すことができます。水の理論容量は、1488mAh/gと大きいものです。実際には、二酸化マンガンの触媒重量で規格化した場合、1750mAh/gの容量が出ています(二酸化マンガンの反応では、理論容量の308mAh/gを超えることはない)。
先に説明したマグネシウム空気電池の1.6〜2.0Vに比べると電圧は低いのですが、その代わりこの電池は、鉛バッテリーのような構造で構成できるので、大型化しやすくなっています。150V80Aもしくは300V40Aの試作電池ができていますから、冷蔵庫などの家電を動かすこともできるでしょう。
──水と反応する一次電池では、最終的に水素が出るのではないでしょうか?
栗原:はい、水素が出ますが、現段階では大気開放です。水素は、密閉しなければ危険は少ないのです。
──自動車用電池としても使えるのでしょうか?
栗原:可能性はあります。ただ、このマグネシウム水電池は充電のできない一次電池ですから、負極の金属マグネシウムを使い切ったら、取り替えることになります。
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