四大メディア広告も成果報酬に移行する?
2008年8月20日
(これまでの 歌田明弘の「ネットと広告経済の行方」はこちら)
ネット広告は、検索広告などでは、表示回数に応じて報酬を支払うコスト・パー・インプレッションからクリック課金に移り、売り上げや会員登録、アンケートの回答などの成果に応じて支払う成果報酬への移行の兆しが出てきているという話を何度か書いた。アフィリエイト広告ではすでにクリック課金から成果報酬へと移行がほぼ完了しており、コンテンツ連動広告などでも似たことが起こると考えられる。
こうした変化は、ネット広告だけなく、四大メディアといわれるテレビ、新聞、雑誌、ラジオなどの広告にも大きな影響をおよぼす。
日本でネット広告は、06年に雑誌広告を抜いたが、あと3年ほどで新聞広告も抜くと考えられる。3年後といえば、アナログのテレビ放送が停止し、デジタルに完全移行するということになっている年だ。デジタル化した放送は、ネットとの親和性を高め、双方向的なやりとりが可能になっていく。ネット広告とのより激しい競争が広告の面でも起こると考えられる。
アメリカでは、来年の2月にテレビ放送のデジタルへの完全移行が行なわれるスケジュールだが、以前にも紹介したeMarketrerの予測では、ネット広告における動画広告も含めたリッチメディア広告のシェアは、2010年までは1パーセント前後の伸びで、2007年の9.7パーセントが2010年になっても12.6パーセントにとどまるという予測だ。翌2011年も2パーセントの伸びで、14.6パーセント。しかし、2012年には、一挙に4パーセント近く伸びて18.5パーセントになると見ている。このあたりで、テレビ広告にあたえる脅威は抜き差しならないものになっているだろう。(eMarketrerは最近、2013年までの動画広告の成長予測を明らかにしているが、成長率自体は、今年度から50パーセント前後の高い伸びであるものの、2012年が成長のピークで78.9パーセントの成長率になると予想している。)
もちろんテレビ広告側も、ネット広告に食われるのを手をこまねいているわけはない。日本でもすでに、番組のあいだに入るスポット広告が集まりにくくなっているなどの苦境が現れているが、そうした状態がいよいよ進めば、キー局といえども「広告の進化」を考えざるをえない。
テレビだけでなく、ネットで有効とされることについては、四大メディア側も無視することはできない。そうなってくると、ネット広告だけで変化を語っていても仕方がなく、ネット広告の変化は、四大メディア広告全般の変化を引き起こすと考えられる。ネット広告の推移もそういう視点で見てみる必要がある。
成功報酬型の広告はこうした変化の起爆剤になる要素を持っている。
広告効果のつかみやすいネット広告の登場で、広告主は、投資に見あったリターンがほんとうにあるのかシビアになってきた。広告主を納得させる早道は、成果に応じた広告費にすることだ。ネット広告がパワーを持ち、広告主にさまざまなトラッキング・ツールを提供するなど広告効果を把握する環境をととのえていけばいくほど、従来のメディアも対応を迫られる。
NTTグループは昨年、成果報酬型の広告の実験をやっている。店舗や会社の検索サイト「iタウンページ」で広告掲載した電話番号へのコール数に応じて広告料金を請求するというもので、「ペイパーコール」型の成功報酬だと説明している。トライアルの目的について、「インターネットの普及等に伴い、消費者のメディア視聴行動や消費行動が大きく変化するなか、企業は広告効果を重要視し、より最適な媒体へ広告を出稿するようになってきています」と言っており、ネット広告が企業行動を変えることを意識していた。
雑誌広告も漸減傾向で、雑誌自体の売り上げも厳しい。その一方、ネット広告は雑誌広告を抜いて上り坂だから、雑誌はネットとの融合を考えざるをえない。女性誌などは広告費が収入の大きな割合を占め、ネットとの融合は有望と見られている。また、物販にもつながりやすく、成果報酬的な要素を取り入れやすい。
雑誌広告についてはまたあらためて取り上げたいと思っているが、とりわけ興味深いのは、アメリカのREVShareという会社がやっている成果報酬型のテレビ広告だ。
次回は、それについてとりあげる。
歌田明弘の「ネットと広告経済の行方」
過去の記事
- 「広告経済」の潮流は変わらない2010年1月18日
- あらゆるものが広告媒体になる2009年12月21日
- 広告経済か無料経済か2009年11月16日
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