このサイトは、2011年6月まで http://wiredvision.jp/ で公開されていたWIRED VISIONのコンテンツをアーカイブとして公開しているサイトです。

歌田明弘の「ネットと広告経済の行方」

ドラスティックに変化し続ける広告経済とネットの関わりを読み解く

動画視聴の実態・アメリカ編――動画広告の発展(2)

2008年5月16日

(これまでの 歌田明弘の「ネットと広告経済の行方」はこちら

 動画広告市場の成長予測がどうなっているかを見た前回に続いて、アメリカの動画視聴の実態についての指標を見てみよう。

 comScore によれば、昨年12月、米国の月間の動画視聴数は100億を突破したという。そして、その内容は、Google(というよりもGoogle傘下のYouTube)の圧勝だった(Googleドメインの動画視聴のうちYouTubeが97%以上を占めている)。

 昨年12月のネット動画視聴が多かったのは、アメリカ脚本組合のストでテレビ番組が貧困だったせいなのではないかとcomScoreの幹部は言っていた。そうした影響はあるかもしれないが、9月に視聴された動画が92億、11月が95億だったのだから、100億を超えても不思議はない。
 実際、1月は100億を少し下回ったものの、2月3月はまた100億を超えている。

 Googleドメインの動画のシェアは着実に増大している。3月は38%を占め、ほかを大幅に引き離している。
 以下、MySpaceを持つフォックスが4.2%、Yahoo!が2.9%、バイアコムが2.2%、マイクロソフトが2.1%、傘下のAOLなども含めたタイム・ワーナーが1.4%というぐあいだ。

 視聴者数では、動画を見た人のうち62%がGoogleドメインのサイトの動画を見ている。以下は、フォックスが39%、Yahoo!が27%、バイアコムが19%、マイクロソフトが18%、タイム・ワーナーが16%である。
 いろいろなサイトの動画を見ている人がけっこういるので合計が100%を超えているわけだが、YouTubeが圧倒的であることには変わりない。

 視聴者1人あたりYouTubeの動画は50.4個見ているのに対し、MySpaceは8.4個に過ぎない。1つの動画の平均再生時間は2.8分で、平均的な視聴者は3月の1か月間で75のビデオを見ており、合計すれば約235分ほど見た勘定になるという。

 eMarketerのレポートは、あちこちのソースを集めたものだが、もう少し詳しく視聴者の実態がわかる(ソースはBurst Mediaの調査:PDF)。

 ネット利用者10人のうち7人以上が動画を見ていて、18歳から24歳の男性は34%が1日1つ以上の動画を見ている。1週間に1つ以上となると8割を超える。
 18歳から24歳の世代は女性でも6割近くが週に1つ以上の動画を見ている。
 男性は世代を問わず、4人に1人以上が毎日見ていて、半分以上の人が週に数回は見ている。動画の視聴がそうとうにポピュラーになってきていることがわかる。

 とくに見ている人が多いのはニュースらしい。
 Online Publishers Associationのデータ(pdf、7頁目)によれば、ネット動画を見ている人のうち70%は月に一度以上、45%は週に一度以上ニュース動画を見ている。31%は天気情報を動画で週に一度以上見ている。

 日々のニュースをネット動画で見ている人が多くなってきたわけで、関心のあるニュースの動画をポータル・サイトやメディア・サイトで見たり、ユーチューブで探して視聴するといったことが、日常的なものになりつつあることがうかがえる。

 Burst Mediaの調査でも、もっとも人気のある動画はニュース・クリップで44.4%が見ている。以下は、音楽(37.5%)、コメディ(35.5%)、映画の予告編や広告(33.7%)、テレビ番組のクリップ(33.1%)、エンターテインメント・ニュース(29.9%)、スポーツ(21.8%)、ハウツー・ビデオ(19.2%)、ユーザー制作のビデオ(15.4%)、政治ビデオ(15.3%)、料理(9.0%)の順である。

 この記事では、動画視聴には世代的な差が大きいことも指摘されている。
 18歳から24歳までの世代では、音楽の視聴が53.1%でトップで、コメディ(46.9%)、テレビ番組のクリップ(44.4%)、映画の予告編や広告(43.0%)の順だが、35歳以上の世代では、ニュースがトップだという。

 ニュース動画がどれぐらい見られているかが、ネット動画が世代を超えた広がりを持っているかのひとつの指標と言えるかもしれない。

 次回は日本の視聴実態について。
 動画広告視聴をめぐる調査や新たな動きなどを今しばらくとりあげる。

フィードを登録する

前の記事

次の記事

歌田明弘の「ネットと広告経済の行方」

プロフィール

『ユリイカ』編集長をへて1993年より執筆活動。著書に『ネットはテレビをどう呑みこむのか』、『科学大国アメリカは原爆投下によって生まれた』、『「ネットの未来」探検ガイド』、『インターネットは未来を変えるか』、『本の未来はどうなるか』など。大学でメディア論などの授業もしている。週刊アスキーで「仮想報道」を連載。アーカイブはこちら 歌田明弘の「地球村の事件簿」

過去の記事

月間アーカイブ