このサイトは、2011年6月まで http://wiredvision.jp/ で公開されていたWIRED VISIONのコンテンツをアーカイブとして公開しているサイトです。

高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

アートと技術、オーディオビジュアル、メディアをめぐる話題をピックアップ

W杯日本対オランダ戦をスカパー!の3D生中継で観た

2010年6月22日

sptv-mediacenter.jpg

6月19日の2010 FIFAワールドカップ南アフリカ、日本対オランダ戦。結果はご存じのように0対1で惜しくも日本が敗れたわけだが、この日、スカパー東京メディアセンター(江東区新砂)を訪問し、試合の3D生中継を視聴させてもらった。

スカパーJSAT株式会社が運営する有料多チャンネル放送「スカパー!」では、現時点で日本唯一となる3D放送専門チャンネル「スカチャン3D169」を新たに開設。南アW杯については計25試合の3D放送を予定している。

プレス資料によると、この3D放送に使用される映像は、オフィシャルFIFAパートナーであるソニーがFIFAとの共同で3D映像化。撮影・制作には、カメラや中継車などを始めとするソニー製3D対応放送業務用機器が使用されているという(CEATEC2009でソニーの3D関連展示を取材した記事)。

この日のプレス向け視聴会は、スカパー!オフィシャルコメンテーターのイビチャ・オシム氏への試合後インタビュー取材(オーストラリア滞在中のオシム氏とメディアセンターを衛星回線でつないで実施)を兼ねていたが、筆者は時間の都合により残念ながらそちらはパス。3D生中継の鑑賞に専念することにした。

視聴に使用したモニターは、前半が日本ビクターの「Xpol」偏光フィルター方式モニター『GD-463D10』、後半がパナソニックの3Dプラズマテレビ『THP54VT2』。それぞれが設置されていた部屋が異なり、照明や視聴距離などの条件が違ったため、あくまでも大ざっぱな比較だが、やはり新しい技術を搭載した後者のほうが奥行き感や激しい動きへの追随で勝っている気がした。

中継映像について。試合開始前の国歌斉唱時の選手や観客席をとらえた映像は、ほとんど動きがないため調整がしやすいのだろう、立体感と奥行き感がしっかり出ていた。試合が始まると、画面左上に出ているスコア部分が常に浮き上がっているのがやや目障りに思ったが、これはじきに気にならなくなった。ライブ映像とスローとの切り替え時に前面にせり出す「FIFA」のロゴは、その都度観る側に焦点距離の調整を強いるので、改善の余地がありそうだ。

ピッチをとらえる映像では、客席レベルから見下ろす引きの絵の時は(これは3D映画の時にも感じられる現象だが)2D映像よりも人が若干小さく見える気がする。一方、スローインやコーナーキックなどでピッチレベルからの寄り気味の絵に切り替わると、各選手の位置関係が奥行き感によって鮮明になり、がぜん3D映像の魅力が増す。まさにピッチ横から観戦しているかのような臨場感で、2D映像では決して味わえない感覚だ。

会場では3Dモニターの横に、スカパー!が別のチャンネルで生中継している2D放送を映すモニターも隣に設置されていたため、両方式のカメラワークの違いも比較できた。最も大きな違いは、シュートが外れたりファウルがあった後にプレイが止まるときの寄りの絵が、3Dではほとんどないこと。視聴者の視力の負担軽減などが理由とされるが、やはり選手の表情のアップがあると、試合への感情移入の度合いも高まる。前後のショットとの焦点位置の移動を減らすような工夫をして、アップの絵も効果的に挿入することが1つの課題だろう。

なおスカパー!では、公式ツイッターアカウント(@skyperfectv)で、FIFAワールドカップに関連するニュースと放送スケジュールをつぶやくほか、オシム氏が各試合にコメントした言葉も日本語に訳して投稿している。鋭くもウィットに富むオシム節をツイッターで楽しみながらテレビ観戦するのもまた一興だ。

sptv-osim.jpg スカパー! 公式サイト

 スカパーJSAT株式会社


 (お招きくださったスカパーJSAT株式会社関係者の皆様に感謝。)

フィードを登録する

前の記事

次の記事

高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

過去の記事

月間アーカイブ