CEATEC2009で3Dを観よう(2):本気モードに入ったソニー
2009年10月 7日
3D映像分野に限って言えば、昨年のCEATECで103型プラズマディスプレイとBDプレーヤーによるフルHDの3Dシステムを展示したパナソニックが、それ以降もいち早く2010年の3D対応テレビ発売を明言し、また業務用としても「プロフェショナル用3D映像制作システム」の開発開始を発表するなど、最近まで競合他社を大きくリードしている雰囲気だった。だが今回のCEATECでは、ライバルの独走を許さないとばかりに、ソニーが3Dを前面に押し出した展示構成で来場者に強い印象を与えている。
2010年の商品化を目指すという52型の3D対応『ブラビア』を8台展示し、映画、ゲーム、スポーツ/ドキュメンタリーそれぞれのジャンル別に3Dのデモ映像を見せるほか、先週発表したばかりの「ハイフレームレート単眼レンズ3Dカメラ」の試作品をブース内の専用ミニシアターで披露。また、メインステージではナレーターと3Dメガネをかけたモデル、大型ビジョンの映像を使って「3Dエンタテインメント」を派手にプレゼンしていた。(以下はRBB TODAYがYouTubeにアップした動画)
単眼レンズ3Dカメラのデモを行うシアターの中は、下手側にカメラの試作品が設置されていて、その奥の静物を撮影した映像信号がリアルタイムで3Dプロジェクターに送られ、上手前方のスクリーンに投影される。観客は立ち見になるので、これから会場を訪れてこのデモを見る方にはなるべくカメラに近い下手側の前方に陣取ることをおすすめしておく。スクリーンの位置に気を取られて上手側に立つと、前列なら大丈夫だが後ろだとカメラの実演が前の人垣で遮られて見えず残念な思いをする(それは私)。また、リアルタイムの映像のほかにも、沖縄の久米島の空撮や、FIFAクラブワールドカップの映像も上映された(後者はマンチェスター・ユナイテッドが出場した昨年12月のものだから、その時期にはすでに試作機ができていたわけだ)。
さて、単眼レンズからの入射光をミラーで左右の画像に振り分けるこの方式は、レンズ口径内でわずかに生じる視差を活用するというものだが、実際に投影された映像を偏光メガネで見てみると、なるほど確かに立体視ができる。傾向としては、個々の被写体の立体感よりも、被写体それぞれの位置関係が奥行き感で自然に表現されているという感じ。フォーカスを手前から奥へ、また奥から手前へと移動させても、ピントが合っていく部分とボケていく部分の絵の変化が実に滑らかだった。
毎秒240フレームのハイフレームレートイメージセンサーにより、空撮やサッカーのように移動や動きの激しい映像も、確かに滑らかで自然に表示されることが実感できた。この単眼レンズ3Dカメラの扱いやすさと動きへの反応の良さ、映像の仕上がり具合からすると、実用化されればスポーツ中継やドキュメンタリー制作の分野でまず導入が進みそうだ。立体感の表現に関しては、今のところカメラ2台によるシステムや複眼レンズのカメラに分がありそうだが、ポストプロダクションで立体感を強調することも可能だろう。
一方、3D対応52型液晶テレビ「ブラビア」の展示は、映画用とスポーツ/ドキュメンタリー用がそれぞれ2台ずつ、ゲーム用が4台という構成。1台ずつ半開放の小ブースに壁掛けで設置され、暗環境で視聴できるよう工夫されていることもあり、輝度、発色ともに申し分ないように感じられた。
劇場用3D映画からのデモ映像は、グループ企業であるソニー・ピクチャーズの『くもりときどきミートボール』と、ディズニーの『カールじいさんの空飛ぶ家』『Gフォース』が楽しめる。実写映画の『Gフォース』ではフォトリアルなCGで描かれたモルモットの体毛の一本一本までが実物さながらの質感で、3D映像ではそれが一層際立って感じられる。これはパナソニックの50型プラズマテレビでも視聴できたので、よい比較になった。
パナソニックの展示についてはまた日を改めて書くが、ソニーは技術自体の性能や機能をただ示すのではなく、単眼レンズ3Dカメラの映像をリアルタイムで投射するデモや、暗環境を作ってジャンル別の映像を見せる3Dテレビなど、いかに魅力的かつ効果的にそれらを提示するかという点に力を注いでおり、その“本気モード”がはっきり伝わってくる展示内容だった。
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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」
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