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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』:アップルII用ゲームから時を超えて映画化

2010年5月24日

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(c)Disney Enterprises,Inc. and Jerry Bruckheimer,Inc.All rights reserved.

『アルマゲドン』や『パール・ハーバー』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ナショナル・トレジャー』といった冒険シリーズ、最近では『スパイアニマル・Gフォース』など、ド派手なアクション超大作のプロデュースで知られるジェリー・ブラッカイマーによる最新の製作作品が本作、『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』だ。エキゾチックな魅力あふれる古代ペルシャを舞台に、父王の殺しの罪を着せられた王子ダスタン(ジェイク・ギレンホール)が、伝説の<時間の砂>を頼りに真実を求めて冒険の旅に出る――。監督は、『コレラの時代の愛』『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のマイク・ニューウェル。

本作のベースになっているのは、プレイステーション2向けに2004年にリリースされたゲームタイトル『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』。この人気ゲームシリーズのオリジナルタイトルは1989年、『Apple II』用アクションゲーム『プリンス・オブ・ペルシャ』として誕生した。同ゲームのクリエイター、ジョーダン・メックナーが当時のゲーム作りについて語ったインタビューが、映画化作品にも通じるアクションの魅力を伝えているので、プレス資料から一部を引用して紹介したい。

聞き手:ゲーム版「プリンス・オブ・ペルシャ」ですが、最初のバージョンが発売された1989年は、まだビデオゲーム業界の原始時代にあたる年代ですね。
メックナー:そうです。当時の私たちがあれから20年後にあたる今のビデオゲームの美しさや洗練された技術を見たら、きっとこれは夢に違いないと思うことでしょう。当時は家内制手工業でしたからね。「プリンス・オブ・ペルシャ」は、まだニューヨークの両親の家に住んでいた私が自分の部屋のアップルⅡコンピュータでひとりで作ったものです。父にはゲーム音楽の作曲で貢献してもらいましたが、その音質はブザーの連続のような音です。また弟に走ったり飛び回ったりしてもらい、それをビデオに撮ってキャラクターの動きの参考にしています。本当にベーシックでスクリーン上のキャラクターはわずか40ピクセルで描かれていました。
聞き手:あのゲームは大ヒットしましたが、その理由は何だと思われますか?
メックナー:クリックするところでしょう。それがプレイする楽しさを高めており、言葉では言い表せないようなクセになる感覚があったため、こちらもデザインやテクノロジーをさらに高めようと努力します。とてもベーシックではあるものの、プレイヤーがこの世界に足を踏み入れるかどうかを自分で決めるという、心的な責任感のようなものが生まれます。これの前に私が作ったゲーム「カラテカ」は中世の日本を舞台にしたもので富士山を背景にしていましたが、それがヒットした理由のひとつはエキゾティックな舞台にしたことだと考えました。そこで新作にも日本に劣らずエキゾティックでかっこいい場所をと考えているうちに「アラビアン・ナイト」の物語が浮かんできました。これはマンガにもアニメにも『バグダッドの盗賊』のようなハリウッド映画にもなっている素材です。この伝説的で神話的な素晴らしい世界をゲームの舞台にすれば、走ったり、飛んだり、剣で戦ったりするには最高の設定になると思ったわけです。

上で語られているようなゲームシリーズの1作目から共通するアクション要素のほかに、今回の映画では「時間を逆行させる砂」がゲーム的な面白さを一層盛り上げている。宝剣に収められた砂を持ち主が流し出すことにより、持ち主だけが「そうなるはずの未来」の記憶を持ったまま過去に戻ることができる。結果的に、これから起きることを事前に知ることになり、敵の攻撃の裏をかいたり、不意のアクシデントを回避するといったことが可能になるわけだ。この「時が逆行するシーン」は、凝ったCGと音響による演出で印象的なシーンに仕上がっている。

主演のジェイク・ギレンホールはこれまでの優男(やさおとこ)のイメージから一転、ビルドアップした体躯で激しくしなやかなアクションを披露する。出世作『ドニー・ダーコ』(2001年)の苦悩を抱えたおとなしい高校生役とは一見好対照だが、「世界を崩壊から救うため、時をさかのぼって献身的な行為を選ぶヒーロー」という点で共通しているのも面白い。

『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』 原題:Prince of Persia: The Sands of Time
5月28日(金)より全国ロードショー
配給/ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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