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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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『トイ・ストーリー』3D版/『トイ・ストーリー2』3D版:魅力増した2本立てで『3』の前に復習を

2010年1月29日

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(C) DISNEY/PIXAR ALL RIGHTS RESERVED.

ピクサー・アニメーション・スタジオの長編劇場映画第1作で、世界初のフルCGアニメーション長編映画である『トイ・ストーリー』(1995年)と、その続編『トイ・ストーリー2』(1999年)が、新たに3D版に生まれ変わって2本立てで2月6日から公開される(日本語吹替版のみ)。

オリジナルの2D映像から演算処理で擬似的に3D変換する方法(こちらの方が時間もコストも抑えられる)ではなく、レンダリングのデータにいったん立ち戻り、これを最新のソフトウェアに移したうえで、右目用の画像と左眼用の画像をそれぞれ1コマずつ再レンダリングしたという。

その甲斐あって、2作とも極めて自然な3D映像に仕上がっていた。比較するなら、『1』(便宜的にそう呼ぶ)は総じて画面全体にフォーカスが合っている絵作り(被写界深度が深い)なので、ショットが切り替わった際にフォーカスの位置を気にすることもなく、目への負担がほとんどない。キャラクターの立体感と空間の奥行き感はいずれも強調されすぎず、自然に物語に入り込んでしまう感じだ。

『2』では4年の間にレンズの効果をシミュレートする技術が進歩していて、被写界深度を浅めにとったワンショットの中でフォーカスを移動させる演出なども目立つので、その分奥行きも3Dで一層はっきり感じられるようになった。加えて、『2』の方が3D映像に向くシーンが多い(冒頭でバズが宇宙で活躍するシーン、トランプが崩れて奈落に落ちていく心理描写、ウッディの修復作業、エレベーターシャフトの高低感を強調したショットなど)ので、飛び出し感、立体感といった「3Dならではの楽しさ」は続編に分がある。

試写では休憩20分をはさんで続けて鑑賞したが、計3時間弱の3D視聴でも目の疲れを感じることなく、魅力を増した名作2本を新鮮な気持ちで楽しむことができた。劇場でも似たような上映形式になるだろうが、小さな子供でも最後まで飽きずに夢中で見入るのではないだろうか。通常の3D映画1本分の値段で2本鑑賞できるのはお得感があるし、7月日本公開予定の第3作『トイ・ストーリー3』(こちらは3D版と通常版の同時公開)を観る前に作品世界を復習しておく良い機会にもなる。

[作品情報]
『トイ・ストーリー』 TOY STORY
監督:ジョン・ラセター
製作総指揮:エドウィン・キャットマル、スティーヴン・ジョブズ
脚本:アンドリュー・スタントンほか
音楽:ランディ・ニューマン
『トイ・ストーリー2』 TOY STORY 2
監督:ジョン・ラセター
原案:ジョン・ラセター、ピート・ドクター、アンドリュー・スタントンほか
音楽:ランディ・ニューマン
日本語版吹き替え:唐沢寿明、所ジョージほか
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
2010年2月6日(土)より2本立てにて全国ロードショー
公式サイト

[下は『トイ・ストーリー』『トイ・ストーリー2』の名場面をリミックスした動画で、WaltDisneyStudiosUKのチャンネルから転載。]

[過去のピクサー作品のレビュー]
『カールじいさんの空飛ぶ家』:ピクサーの冒険精神はさらなる高みへ
『ウォーリー』:アニメ映画史上に残る傑作

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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