CEATEC2009で3Dを観よう(4):普及の鍵はやっぱりコンテンツ?
2009年10月 9日
パナソニックとソニーが来年、まだ投入時期を明言していない他の家電大手も2011年ごろまでには3D対応テレビを売り出すと仮定すると、今度はそのテレビでどんな3Dコンテンツを観るかということが問題になってくる。
ブルーレイディスク(BD):パナソニックが昨年から提案している3D視聴システムの重要な要素。9月28日の同社のリリースでは、フレームシーケンシャル方式(右眼用と左眼用のコマを交互に表示)の50v型PDPとアクティブシャッター・メガネの2点が2010年の商品化の対象のようなニュアンスになっているが、ブルーレイディスク・アソシエーション(BDA)から「3D拡張規格」が(おそらくは年内に)承認されれば、対応BDプレーヤー/レコーダーも当然同じタイミングで売り出すだろう。
同社は20世紀フォックス映画などと映画『アバター』での共同プロモーションを行うことで合意したと発表しており、『アバター』の3D対応BDが最初のキラーコンテンツとして起用される可能性も高い。またディズニーも昨年のCEATECでのBDAキーノートスピーチでBD製作中の新作32本のうち16本を3D化していくと述べていたことから、ディズニーのタイトルも早々に出てきそうだ。さらに、旧世代3D技術のアナグリフ方式ですでに販売されているBDタイトル(『センター・オブ・ジ・アース』や『ポーラー・エクスプレス』など)も、新方式に切り替えて再リリースされると思われる。
デジタル放送:来年発売される最新の3Dテレビを買ってきて、スイッチを入れたらすぐ3D放送が映るなら話は簡単だが、残念ながらそうならないかもしれない。昨年12月にバラエテイ・ジャパンに掲載された記事によると、「NHKは3-D放送による人体への影響を懸念し、少なくとも5年間は導入を見合わせると発表した」という(元記事はなくなっているが、2ちゃんねるの掲示板に転載されていた)。また、こちらのロイターの記事でも、「地上放送では2013年以降になると思う」というパナソニックの小塚氏の発言を引いている。
「日本初の3D放送」を謳う日本BS放送(BS11デジタル)の3D番組にしても、まだ3D放送の規格が策定されていないため実質的には試験放送だと思うが、これは右眼用と左眼用の映像を並べて送信する「サイドバイサイド方式」の放送を、有沢製作所の『Xpol』技術を採用したヒュンダイITジャパン製の3D対応テレビでライン・バイ・ライン(走査線1本おきに右眼用と左眼用の画像を交互に配置)表示し、パッシブタイプの円偏光メガネで視聴するというもの。もしパナソニックなどのメーカーが、サイドバイサイドの放送をフレームシーケンシャルで表示する機能を3Dテレビに搭載すれば、少なくともBS11はすぐ視聴できることになるが、なにしろ先述のようにまだ3D放送自体が規格化されていないので果たしてどうなるか。
ゲーム:ソニーの展示で3Dテレビの8台中4台がゲームデモ用だったことからもうかがえるように、同社の3D展開においてPS3の3D対応と3Dゲームもまた重要な位置を占める。AV Watchの記事では「PlayStation 3は初代機を含めてすべてのモデルが、ファームウェアのアップデートで3D映像の出力に対応する」と報じられている。ゲームユーザーにとって3Dゲーム環境の充実は3Dテレビ購入の大きなモチベーションになるだろうし、非ゲーマーのAVファンにとってもPS3が3D BDプレーヤーになる(おそらく当分は最安の3D BDプレーヤーの座をキープするはず)というのは大いに気になるところだ。
ネット動画:独立行政法人情報通信研究機構(NICT)のブースでは、立体ハイビジョンマルチキャストIP伝送実証実験という展示を行っていた。これは3Dの方式としてはBS11の番組と同じで、サイドバイサイドの映像をインターネット経由で伝送し、Xpol採用のディスプレーで表示するというもの。この展示を見て思ったのは、3Dテレビが発売されてからしばらくの間、放送コンテンツの不足分をIPTVや動画サイト、ビデオオンデマンドのようなネット経由の動画コンテンツが埋めてくれる可能性もあるのでは、ということだった。たとえば1時間に満たないようなネイチャー/サイエンス系ドキュメンタリーの3D映像は、メジャー映画タイトルに比べると販売枚数が見込めずBDパッケージでリリースするのはかなりハードルが高くなるが、TSUTAYAがIPTVサービス「アクトビラ」で提供している「TSUTAYA TV」などでオンデマンド配信するなら、値段次第ではそこそこロングテールを構成するコンテンツになるのではないだろうか。
……以上、数回にわたり今年のCEATECで見てきた3D関連の展示について書いてきたが、裸眼で立体視できるディスプレーなど、ほかにもまだ紹介したい技術がいくつかあった。ただし用途としては当面デジタルサイネージなどの業務用が中心で、家庭で3D映画などを鑑賞できるような画質と個人で購入できる価格を両立できるものはおそらく5年から10年は先だろう、という印象を受けた。ただ、以前にフォトフレーム『SDP818-TEX』のレビューでも書いたように、裸眼での立体視はやっぱり3Dメガネがないぶん開放感があり、技術的にも興味深い点が多いので、今後機会があればまた取り上げてみたい。
(この動画はフラウンホーファー HHIの展示にあった3D-キオスク。)
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