CEATEC2009で3Dを観よう(3):総合力で先行するパナソニック
2009年10月 8日
家電大手が揃って3D対応テレビを参考出展しているのはこれまでレポートした通りだが、パナソニックの3D関連の展示には他より際立っている点がある。それは、PinP(ピクチャー・イン・ピクチャー)機能を利用して1920×1080ピクセルのフルHDで左眼用・右眼用の映像を収録するブルーレイディスク(BD)とそれを再生するBDプレーヤー、フレームシーケンシャル方式で毎秒120コマ(左右交互に各60コマ)で表示する50型プラズマテレビ、この映像表示に信号で同期するアクティブシャッター方式のメガネなど、3D視聴を実現する各コンポーネントの技術仕様の基本的な要素をはっきり説明していることだ。試作バージョンの参考出展とはいえ、来年発売する製品バージョンもほぼこの仕様で出す、という明確なメッセージだろう。
さらに、半導体メモリーカード「P2カード」を使用する「2眼式P2カメラレコーダー」(来年秋のリリースを目指しているという説明だった)をはじめとする開発中の「プロフェショナル用3D映像制作システム」や、ハリウッドの映画スタジオとの協業に基づく3Dソフト制作など、3D映像分野の総合的なソリューションに取り組む同社の姿勢がうかがえる展示構成となっている。
ブース内のミニシアターでは、昨年のCEATECと同じ103型プラズマディスプレイを使ったフルHD 3Dのプレゼンが行なわれ、同社が3D普及で提携する20世紀フォックスの映画『アバター』の予告編などが鑑賞できた。プレゼンの最後ではそれまで上手側のカーテン奥に隠されていた50型プラズマテレビも披露され、短いながらもデモ映像が再生された。なお、ここで手渡された3Dメガネは、レンズ脇の目立つ部分にパナソニックのロゴが入っているが、耳かけの黒いラバー部にはXpanD社のロゴが浮き彫りになっていたので、明言はされていないもののXpanD社からライセンスを受け、パナソニックがこのシステムに合わせて改良したようだ。
また、このミニシアターの外側では、ソニーと同様にジャンル別のデモ映像を再生する50型プラズマテレビが数台設置され、映画では『Gフォース』の一部シーンと『トイ・ストーリー3』のティーザー予告が視聴できた。
3D関連の展示の充実ぶりはまさに目を見張るほどだったが、敢えて難点を挙げれば、昨年CEATECにも来ていて今年8月に『アバター』の3D映像を見ている来場者にとっては、想定範囲内というか、期待を上回る驚きがあまりないことだろうか。103型PDPでのデモは5分程度だったと思うが、その半分近くは自社の取り組みをアピールする2Dの宣伝映像で、昨年のデモのほうが風景、映画(ディズニーの『ルイスと未来泥棒』の一部シーン)、スポーツ、音楽とバラエティー豊かな3D映像をたっぷり楽しめた。『アバター』のティーザーにしても、8月21日に世界で同時公開された約15分の特別映像に比べると、3Dならではの立体感や奥行き感が効果的に出ているカットが少なく、コンテンツもハードも魅力を十分に出し切れていないというか、端的に言えば「もったいない」感じがした。
103型PDPのデモの後に最新の50型PDPを見せるプレゼンの仕方も、当然のことながら後で見せられる方がサイズが小さいのでインパクトが弱くなり、なにかもう一工夫できなかったものかと惜しまれる。この50型PDPは先述の通りミニシアターの外にも数台展示されているが、設置環境は多少暗くなってはいるものの、ソニーのように個別に仕切って暗環境を作っているわけではなく、また映画用デモ機に関してはソニーの3Dテレビに比べて画面との距離が若干遠いせいもあって、『Gフォース』のモルモットの体毛など細部の立体的な質感がソニー機ほどリアルに伝わってこない気がした。
昨日のソニーの回では、「単眼レンズ3Dカメラの映像をリアルタイムで投射するデモや、暗環境を作ってジャンル別の映像を見せる3Dテレビなど、いかに魅力的かつ効果的にそれらを提示するかという点に力を注いでいる」と書いたが、そうしたプレゼンテーションの工夫の点でソニーがパナソニックよりも勝っていたと思う。
もっとも、103型PDPも『アバター』の3D映像も初めて体験するという来場者ならきっとデモ映像の素晴らしさに感動するだろうし、パナの50型PDPとソニーの液晶52型を同じ視聴環境で比較してみたらまた違った感想になるのかもしれない。パナソニックに対してはつい期待が大きくなっていたせいかあれこれ難点を挙げてしまったが、3Dテレビを中心とする家庭用3D映像機器の市場開拓に向け率先して取り組んでいるのは間違いなく同社であり、宣言通り来年に製品をリリースしてくれることを(そして、できれば値頃なモデルも用意してくれることを)今から楽しみにしている。
(パナソニックの3D関連展示の様子。この動画の投稿者は「CEATEC2009」となっているが、国籍がアメリカ合衆国なので公式チャンネルというわけでなさそう。)
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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」
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