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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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CEATEC2009で3Dを観よう(1):家電大手は揃って3D関連技術を展示

2009年10月 6日

ceatec2009_3d.jpg昨日のエントリで、『CEATEC JAPAN 2009』で3D製品や試作品などの展示を行う企業ブースをまとめたが、出展者情報やプレスリリースで発表していないもののブースには3D対応テレビなどのデモを行なっている企業もたくさんあった。昨日書いたパナソニックとソニーのほかにも、シャープ、東芝、三菱電機、日立製作所といった大手家電メーカーはすべて展示があり、ブース内に小部屋を設けたミニシアター形式のデモではいずれも順番待ちの行列ができていた。

シャープは60型のフルHD 3D液晶テレビを展示。シンプルなパネル構造で液晶分子の向きを精密に制御できるという光配向技術「UV2A技術」のほか、高輝度のLEDバックライトシステムと3D用画像処理エンジンをそれぞれ新規に開発したとのことで、「さすが液晶のシャープ」と思わせる鮮やかでクリスプな映像で楽しませてくれた。デモ映像も秀逸で、CGの恐竜がまさに眼前にせり出してくる飛び出し効果や、サンフランシスコの市街やナパヴァレーのブドウ畑のすっきりと見通しの良い風景、夜空にくっきりと球状に広がる花火など、3Dの魅力を効果的にアピールしていた。

東芝は『3D CELLレグザ』と名付けた55型の液晶テレビを参考展示した。ベースとなっている『CELLレグザ 55X1』は12月上旬発売予定の新モデル。CELLはIBM、ソニーと共同で開発した高性能プロセッサ『Cell Broadband Engine』を指し、ソニーの『PlayStation 3』にも搭載されている。デモでは、Cellチップの高度な処理能力を活かした2D映像のリアルタイム3D変換も行なわれ、風景などの映像では自然な立体感に変換されていた(ただし、バストアップの絵では顔の浮き出し具合がやや不自然だったが)。また、「3D空間モーションインターフェース」と名付けられた『マイノリティ・レポート』風ハンドジェスチャーによる球形プレイリストの操作も、3Dの性質とうまく組み合わせた良いアイディアだと感心した。

三菱はすでに米国で販売しているDLPリアプロジェクション方式の3Dテレビを展示。82型と60型の2モデルがあり、日本で発売するかどうかは検討中だが、60型の方はもし売るとしたら20万円程度で出せるのではないかとの説明だった。ただ、他社の最新技術を使った試作モデルに比べると、画質に今ひとつキレが足りないように思われた(デモ映像の問題かもしれないが)。

他の家電メーカーとはタイプが異なるが、日立が参考出展した「フルパララックス立体ディスプレイ」はとても面白い。資料によると、装置下部に組み込まれた複数台の小型プロジェクターから上部パネルのレンズシートに向けて、畳を重ねたように光線を投影する(「重畳型光線再生方式」と呼んでいる)ことにより、解像度の高い立体映像が裸眼で鑑賞できるようになっている。このディスプレイで表示された映像がすごいのは、顔を動かして視点を上下左右に移動させると、それに応じた被写体の側面が見えるようになること。まるでディスプレイの奥に立体物があるかのように錯覚するほど(品のない例で恐縮だが、映画などでよく、お馬鹿でエッチな男子が、テレビに映ったミニスカートの女の子を下から覗こうとするジョークがあるが、あれがジョークにならなくなってしまうということ)。まずは医療、デジタルサイネージ(看板・広告)、CAD分野からの採用を目指し、3年後くらいの実用化を目標にしているという話だった。

YouTubeで検索したら、GIGAZINEがこの展示の動画を早速アップしていた。さすがGIGAZINE、仕事が早い。デジカメを持参するのを忘れて携帯で撮ったサエない写真を申し訳程度に載せている筆者とは大違いである。

長くなったので、パナソニックとソニーの展示についてはまた日を改めて。

(2に続く)

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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