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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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映画『G.I.ジョー』:近未来兵器が続々登場するアクション超大作

2009年7月26日

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(c) 2009 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

現在からそう遠くない未来。人類に福音をもたらすはずだった夢の科学物質“ナノマイト”が、世界を我がものにせんと企む邪悪な者たちの手によって、金属を食い尽くす究極の化学兵器に変えられてしまった。闇の武器商人のバックアップを受けた悪の組織“コブラ”に立ち向かうのは、多様なガジェットを操り、あらゆる身体機能を飛躍的に強化するハイパー・スーツに身を包んだ最強の国際機密部隊“G.I.ジョー”。成層圏から北極海の厚い氷の下まで、地球規模の壮絶なバトルが今、その幕を開ける――。

米Hasbro(ハズブロ)社が1960年代に売り出したアクションフィギュア『G.I.ジョー』は世界的な人気を博し、コミック本やアニメ番組にもなった。1980年代のテレビアニメ『地上最強のエキスパート・チーム G.I.ジョー』をベースにした実写映画が本作。『トランスフォーマー』と同じ玩具→アニメ→実写映画化という流れで、米軍が協力した戦闘アクションという点でも共通するが、あちらがロボット生命体同士のバトルがメインであるのに対し、本作は(ハイテクで強化されているとはいえ)あくまでも生身の人間同士による戦いが見どころになっている。

"G.I."というのは"Government Issue"の略で、「官給の」という本来の意味から転じて米軍兵士を指す俗称になった。したがって「G.I.ジョー」も当初は兵士のフィギュアに与えられた「米兵ジョー」という名前だったのが、コミック化とアニメ化の過程で特殊部隊全体を指す名称になったようだ。

軍事マニアやSFファンにとって嬉しいのは、軍が実際に研究開発に取り組んでいる次世代の兵器に着想を得たガジェットや武器が多数登場することだ。上のあらすじで触れたナノ物質(戦車や戦闘機を一瞬にして食い尽くす)や加速装置付きのハイパー・スーツ(自動車と同じ速度で走ることができ、衝撃にも耐える)のほか、光学迷彩を使った透明スーツや、3Dホログラムを使った通信装置、死んだ敵兵の脳から記憶を取り出し映像化するガジェットなども出てくる。この手の技術はワイアードの翻訳ニュースでもたびたび取り上げており、このページの最後で過去記事へのリンクを張っておくので興味のある方はぜひ読んでいただきたい。

監督のスティーブン・ソマーズは、『ハムナプトラ』シリーズや『ヴァン・ヘルシング』、『ザ・グリード』という、微妙にB級感漂うVFXアクション映画で知られてきたが、今作は間違いなく同監督の代表作の一つになるだろう。1億7000万ドルの大型予算のおかげもあって、派手で斬新なアクションが息もつかせぬ展開で繰り出され、ゲーム体験に近い爽快感もある娯楽大作だ。NATOの部隊長からG.I.ジョーに加わったデュークと女テロリスト・バロネスの過去、G.I.ジョーの覆面キャラ・スネークアイズとコブラの暗殺者・ストームシャドーという宿命のライバルについてのエピソードを除き、人物描写が浅いという難点はあるが、明らかにシリーズ化を意識した作りになっているので、2作目以降で徐々に各キャラの来歴や性格が描かれていく可能性はある。

主役クラスの若手俳優陣は日本であまり知名度がないが、脇役ではストームシャドーを韓国人俳優のイ・ビョンホンが、またG.I.ジョーを率いるホーク将軍をデニス・クエイドがそれぞれ演じる。また、『ハムナプトラ』シリーズの有名俳優もカメオ出演している。

おまけで、YouTubeに「『G.I.ジョー』の歴史」と題された動画があったので下に貼っておく。アクションフィギュアがベトナム戦争やカンフーブームに影響を受けたことや、コミック本とアニメ番組の流れが紹介され、今作の予告編の映像も一部含まれている。映画に登場する主要キャラクターがフィギュアではどんなルックスだったのかが分かって興味深い。

[公開情報]
『G.I.ジョー』 原題:G.I. Joe: The Rise of Cobra
監督:スティーブン・ソマーズ
キャスト:チャニング・テイタム、シエナ・ミラー、イ・ビョンホン、デニス・クエイド、レイ・パークほか
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
8月7日(金)より丸の内ルーブル他全国拡大ロードショー
公式サイト:www.gi-j.jp/

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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